※ テイルズオブエクシリアをプレイしていたら、凄く好みのキャラ設定がありまして、是非ヤンバニでパロしてみたい!と思ったので設定だけ借りています。ということで、この話にはそのキャラの一部ネタバレを含みますのでお気をつけて下さい。一応ゲームを知らなくても読める話にはしてあります。
男、虎徹にとっての、友達の定義は綿密ではない。
そもそも男同士ならば、俺達友達だよな?とかわざわざ確認し合う方が女々しいと思っているからこそ、語らずに出来ていくものだと思っている。
だからこそ親友とか知人とかそのライン引きなんてわざわざ明確にはしていないし、するつもりもなかった。
そんな中で虎徹は、いかにも友達が少なそうな男と出会ったのだった。
バーナビー・ブルックスJr.という文句なしのハンサムと接点が出来たのは、職場の同僚という、理由だけは男らしい内容だったが、このバーナビー…さすが友達少なそうな男だからこそ全くもって虎徹とは打ち解ける機会がなかった。
虎徹としては無節操でないほどにはそれなりに博愛主義者であるし、何よりも下手すると起きている時間の半分以上はこのバーナビーがパートナーとして隣にいたりもするのだからと、なるべく積極的に仲良くしようという学生じみた事だがそういう態度を取っていたのだが、なかなかうまくいかなかった。
その鉄壁のガードがほんの少し崩れたのが、市長の子どものベビーシッターをする事になった時にホァンと共に無理やりバーナビーの家に押し掛けたときだった。見事にバーナビーの家に踏み込むことに成功したのだ。なかなかの快挙だ。
一度懐に入り込めばこっちのものだと思った。
その日、虎徹は…もちろん代価は払ったが酒屋である兄に送って貰った上等な酒をつまみに、再びバーナビーの家の前に押し掛けた。
「バニーちゃん。俺だけど…中に入れて欲しいなーって思ったり」
「………オレオレ詐欺はご遠慮願いたいんですけど」
突然な虎徹の訪問にインターフォン越しでもアリアリとわかるほどバーナビーは不機嫌さを醸し出した。それでも若干子供のように駄々をこねたら何とか中へと入れてくれたが、嫌々と言うため息交じりだ。
それにしても相変わらずこの部屋は不必要な物は一切なく天井までも広々した空間だ。虎徹の家とは真逆と言っても過言ではないのかもしれないほどだった。掃除しないとな…と実感させられる。
物珍しく眺めるようなものもないが、一応バーナビーがキッチンへ来客用のグラスを取りに行ってしまったので暇すぎた。虎徹は何気ないようにぷらぷらと部屋をぐるりと歩くことになった。
「ん?ああ…これは」
背面のハイビスカスと特徴的な間接照明しかなくそっけない飾りさえない部屋で、唯一の置物を見つけて虎徹はつぶやく。
濃青色をした典型的なロボット型のおもちゃだ。前にバーナビーに聞いた時は、確か両親から貰った誕生日プレゼントだと言っていた記憶がある。本人はかなり気にいっているらしく、乳幼児である市長の息子に貸すのさえ渋っていた代物だ。あれはなかなか大人げないような気がするとは思ったが、両親の形見の一部だとすると、今なら納得出来るかもしれない。
「しかし…普通のロボットだよなあ」
虎徹の子どもは女の子なのでロボットを買い与えた事はないが、ぬいぐるみとか人形に相当するものなのだろうか。
そういえば前々から疑問に思っていたが、バーナビーの屋敷は不幸にも焼け落ちた筈なのに、どうしてこのロボットだけは平穏無事なのかと。もしかしたら、何か仕掛けがあるのかもしれないと半分疑いをかけて、虎徹はロボットを右手でがしっと掴んだ。
『触るなら、声をかけてからにしてくれませんか?』
まだ触れて数秒も経っていないうちに、突然虎徹の耳に飛んできた声があった。
あれ、もしかしてバーナビーか?と思って後ろを振り向いたが、まだキッチンから戻っていない様子しかない。
しかもその声はいつものバーナビーの声より随分と音程が高いというか可愛らしいというか、とにかく違ったのだ。
それに一番は………その声が聞こえて来たのが、このロボットからだと思ったからで。幻聴かと思ったのだが。
「もしかして、目覚まし機能でもついているのか?」
疑問を口に出しながらも、虎徹はボタンを探し出した。しかしボタンはなく、というか時計がついていないのに目覚ましって何だ?という勢いだ。
『あの、あまりベタベタ触るのは………セクハラだと思います』
またロボットから声が飛んでくる。一体、どーなっている。会話が成り立つ目覚ましとは斬新すぎる―――
「ちょっと、虎徹さん!何やってるんですか?」
慌てた様子でトレイを持ったバーナビーの声が聞こえる。今度はきちんと後ろからだから本人だ。
「いや…この目覚まし、変わってるなあと思って」
顔だけバーナビーの方に向けながらも虎徹はしみじみと声を出す。
『僕は目覚ましじゃありません。バーナビーの友達です』
驚いたことに虎徹がバーナビーに向けた言葉の返答をしたのは、ロボットの方だった。
慌ててロボットの方を振り向いた時、虎徹の手にしていたロボットは手と足で軽くバタバタと身動きをしていて、感触も確かにあって。
「コ、コイツ。動くのか!?」
叫んで息をのんで、思わず反射的にその手を放すと床から30cm程の高さからロボットが落ちる形となったのだが、カシャンッと音を立てて見事に着地をしていた。問題はないようだ。
「はあ…だから家に上げるの嫌だったんですよ………」
わざとらしくバーナビーは深々とため息まじりにそう言うと、右手で軽く側頭部を抑えた。
「えっ、なにこれ。どういう仕組みなの?」
いくら手の上に乗るほどのサイズだとはいえ、こんなに的確に動いたりしゃべったりするロボットを虎徹は今まで見た事はなく素直に驚きと単純な好奇心からの質問が飛ぶ。
適当に触っていたが、この小さな身体に高性能が詰まっているのだとしたら単純に凄いと思うからだ。
「身体のベースは僕の両親が作ったみたいですけど、しゃべったり学習したりする機能は両親の研究所にいたNEXT能力者に助力を得たそうです。僕の両親は仕事が忙しくて若干留守にしがちでしたから、4歳の僕が寂しくないように友達を作ってくれたんです」
もはや仕方ないと判断したらしいバーナビーはロボットに対する説明をしてくれる。
「一人っ子の話し相手…にちゃ、また随分と壮大なプレゼントだな」
バニーの両親が作ったのだから無駄に高性能に違いないとは思ってはいたが、まさかこれほどまでとはと虎徹としては感心するしかない。こんなに高性能なおもちゃは、普通には流通していないだろうから。
「そうでしょうか?子どもの頃からずっと一緒にいるので初めてそんなこと言われたような気がします」
バーナビーに取ってはこのロボットがしゃべって会話が成り立つ事が普通すぎるのだろうか。大した事がないような口ぶりだった。
「そういうもんか。しっかし、俺もヒーローとして色々なNEXTに会って来たけど、ロボットにそんな事を覚えさせるNEXTっつーのも凄いなあ」
NEXTの可能性の無限大を実感して虎徹は大いに感銘を受けた。精神系NEXTはなかなか大っぴらに表に出る事が少ないとはいえ、こういった良い事に使えるのは単純に羨ましいと思うのだ。
「僕もその方には直接お会いしたことはなくて。僕が物心ついたときには研究所をやめてしまったようで、名前だけしかわからないんですよ」
ちょっと残念そうにバーナビーは声を落とす。
「そうなんだ。ちなみに何て名前?」
興味本位で虎徹が聞くと、すらすらとバーナビーは男性名を告げて来る。だが、しかしもちろん虎徹が知っているNEXTのわけがなく、ふーんと反応するくらいで終わった。
「んで、これどうやって動いてんの?動力もNEXT能力で補えるの?」
「まさか。充電式です。
そうですね、そういえばそろそろ充電の時間ですが…食事はどうしますか?」
最後の言葉は虎徹にではなくロボットに対してかけられた言葉だったらしく、バーナビーは身を少しだけ屈めてロボットへと視線を合わせて尋ねた。
『お腹すきました。ご飯、食べたいです』
丁寧な言葉でロボットは答えて来る。ついでにこくりと頭を上下に動かして感情のリアクションも的確だ。
「へえー、意外とお上品な口ぶりなんだな」
ロボットと言うと冷たく機械的なイメージだったが、なごやかで愛着が沸きそうな言い方だった。
「当時は、4歳児の僕の友達でしたから。僕の性格に合うように声も幼い男の子にして、言葉づかいも僕に近いように設定したらしいです」
今となっては両親が亡くなってしまったので、変える事とか出来ないのだろう。少し物さびしく言っているように虎徹には聞こえた。
「では、僕は充電に必要なプラグを持って来ますね」
ロボットの食事を用意する為に、そう一声かけてバーナビーは部屋から遠ざかって行った。
『はじめまして、こんにちは。あなたは虎徹さん…ですよね?』
「えっ、俺の事知ってんの?」
普通にロボットに話しかけられて、思わず自分自身を指し示しながら虎徹は尋ね返す。声をかけられるだなんて予想外だ。
『ええ、もちろん。バーナビーから良く話を聞きます。僕は、バーナビーの事をいつも心配してくれて優しくて正義感の強い虎徹さんが大好きですよ!』
ありがたいことに全身の手足を使って、ロボットは感情を表現しつつもそう言ってくれた。
「おおー嬉しいな。バニーもこれくらい素直だったら、いいのに…」
ロボット相手にとはいえここまで素直に好意を示されるのもなかなか貴重で、単純な嬉しさを感じた。好かれるのは全く悪い気がしない。
『バーナビーは、ツンデレさんなんですよ。素をあまり外に出すのが苦手みたいです』
ここで少しだけロボットの声も残念そうに音質が落ちる。
「うーん。ああ、そうっぽいな。さすが、バニーのことに関しては詳しいんだな」
というか多分バーナビーは他人にあまり弱みを見せたりするタイプじゃないんだろう。両親の事もあってウロボロスに必死で、友達を満足に作っている余裕もなかったのかもれしないと感じた。
『ええ、僕はバーナビーの友達ですから。バーナビーのことはたくさん知っています』
「そりゃ凄いな。普段のバニーってどんな感じ?実はおしゃべりだったりしない?」
自信満々にロボットは答えて来るので興味本位で色々と聞きたくなってくる。本人が居ぬ間にというやつだ。
『おしゃべりはあまりしないです。でも、お仕事の話をすることもありますよ。もちろん虎徹さんのお話も』
「うーん。俺、バニーに怒られることも多いからなあ。もしかして愚痴っているのかなあ」
ここで日ごろの行いを思い出してしまって、虎徹はがしがしと頭をかく。
『バーナビーは虎徹さんが思いどおりになかなか動いてくれないから、つい怒ってしまったりするみたいですよ。あとで反省もしているみたいです』
バーナビーの感情を真似するように、少しだけしゅんとした仕草を加える。
「そっか。俺も…もうちょい意見が対立しないように頑張るよ」
なかなか面と向かってバーナビーにそうは言えないけれども、虎徹はまるで約束するように言葉を出した。
『頑張って下さい。僕も応援しますから』
「ありがとな。お前は優しくて良い子だなあ」
背伸びをするようなジェスチャーをしてきたので、虎徹は思わず子どもの頭を触るように、ロボットをなでなでした。
『虎徹さんの方が優しくて良い人だと思います。だから僕とても心配なんです。ヒーローをしている虎徹さんを恨んでいる悪い奴が、いつか虎徹さんを殺そうとしないかなって』
「心配してくれてありがとな。大丈夫だって。俺にはハンドレットパワーがあるんだから」
まさかそんなことを言われるとは思わず苦笑しながらも、少し力こぶをして見せたりして虎徹は自分の強さをアピールする。
『でも…』
「ん?どうした?」
しかしロボットは不安そうに言葉を押し留めるので、明るく続けさせる言葉を出す。
『僕、思うんです。虎徹さんを殺すのって多分凄く簡単ですよ?人質をたくさんとって、代わりにワイルドタイガーに死んでくださいってお願いすれば、虎徹さんは迷わないでしょ?』
屈託のない声を響かせて、ロボットはまるでそれが確定事項のように虎徹に告げて来た。
………どうやら…少し性格歪んでしまっているロボットになっているようだった。
そんな押し掛けを最初に、虎徹は何度かバーナビーの家で飲み会のように行くことが多くなった。
いや、なんといってもバーナビーの家は会社に近く絶好の立地なのだ。若者と交流を深めるチャンスを虎徹は有効活用したと言っても過言ではない。
顔出しヒーローのバーナビーは外に行ってもあまり飲酒で羽目を外せないだろうかと言う配慮もあり、やはりこの部屋で飲むことが多いようだ。
必然とたまにその二人の会話には、あのロボットが加わる機会も増えた。
バーナビーの部屋では来客自体があまりないようだったが、それでもハウスキーパーが来ても驚かれるだろうからと空気を読んでロボットはしゃべったりしないようにしているらしく、だからこそ虎徹がバーナビー以外で初めて出来た話し相手だったらしく、良く話すことにもなる。
ロボットだからこそ機械には強いらしく、バーナビーと虎徹がグラス片手にしゃべっていると話にはついていけないらしく、よくパソコンの前に居た。
パソコンに自身のプラグを接続させて、色々と遊んでいるようだ。
ある時などガンアクションが出来るゲームをしていたのだが、それは虎徹に取っては見知らぬゲームだった。
「そのゲーム。どうしたんだ?」
バーナビーってゲームなんかするタイプだっけと思いつつ虎徹はロボットに質問する。
『僕が自分で作ったガンシューティングゲームです』
「おおっ、これを?凄いな…」
見上げたものだと声を上げながら称賛する。しかし、ヤバいな…確実にこの分野に関しては断然虎徹より頭がよろしいようで。グラフィックも簡易的ではあったが、きちんと表示されており、おそらくそのシンボルはスーパーヒーローの面々だ。今ロボットはバーナビーのアイコンシンボルを使って敵?と思わしきターゲットを撃ち落としている。なかなかの腕前だ。
『敵がたくさんいるので作るのが大変でした』
「うん、そうだな。良く出来てる。敵役?もこってるし、しかし人型にしては結構特徴ある敵たちだな」
凡庸型というより敵さえも個性のある面々で、こだわりを感じて虎徹は声を出した。
『ええ。さっき殺したのは、三日前に虎徹さんに殴りかかって反撃してきたNEXTがモデルで。あ、今腕が吹っ飛んだのは虎徹さんがデビューしてまだ新人の時に、虎徹さんに暴言を吐いた元軍人がモデルですね………みんな死ねばいいんです』
そうやって丁寧に説明しながらもロボットは次々と敵とおぼしき男たちを撃ち倒して行った。
虎徹は少し苦笑しながらも無言で注視する。
うーん………どういったNEXT能力の作用かはわからないが、ロボットの学習能力はなかなかのもので、さすがバーナビーの側にいただけのことはあるだけの簡単な知識は身についていて、会話に遜色もなかった。
ただやはり少し感情面では庇いきれないほど常識外れな部分もあり、たまに毒を吐くような奇妙な事も言うけど。それが冗談なのか本気なのか掴み取りにくいが、垣間見せる卑屈な部分とかは子どもらしいというか。若干のネガティブ思考は多分バーナビーに影響受けちゃったのだろうなという生暖かい気持ちで過激発言をされても見守っていた。まだ子どものようなものなのだろうから、小さな子どもってそうものなのかもなと思いながらも、新鮮味もあって可愛がることにしたのだ。
そんな日々が続いていた最中だった。また今日もロボットはパソコンと接続していて、今日はネットサーフィンのようだ。
どうやらシュテルンビルト最大の料理サイトを開いていたので、虎徹は横目で見ていた。ロボットのこの小ささでは料理を作るのは無理だし、そもそも飲食をするような必要性がないのだから、単純な好奇心から見ているのだろうと、微笑ましく思う。
内部からプログラムで干渉しているらしく、検索バーには直接出てこない。ただ、何かレシピを探しているようだったが、残念ながらhitしないようで[そのレシピはみつかりませんでした]の表示が何回も出て来る。
『…残念です。いくら探しても虎徹さんの作り方が出て来ません』
うーん。ロボットは何かまた変な事を呟いている。いつものことだが、なんかちょっと変わっているのでどうにかならないものだろうか。
それに最近なにかロボットは元気がないのだ。時たま、折角だからロボットと遊ぼう!と思ったが、やはり反応が鈍いと言うか。目の前で試しに手を何度か振っても、棒立ちしているだけとか。その時はロボットなのだから正確には違うのだろうけど、まるで寝ているようだった。
あまりおしゃべりをしなくなったし、動作も最初に会った頃よりぎこちない感じを受けた。
それでいて自分の調子が悪いとか主張はしてこないし、やっぱり人間相手とは少し違うのだろうか。意思疎通がままならなかった。
「うーん。さすがにどうにかしてあげた方がいいよな」
「そうですね」
バーナビーも虎徹の言葉に同調する。目の前でそんな会話をしていても、当のロボットは無反応だ。
ロボットに対しておかしいのかもしれないが、やはりよくおしゃべりはするし気立てがいいので虎徹はすっかり情がわいていた。
しかしどうにかすると言っても、二人ともそこまでロボットには全く詳しくないし、原因が何かもわからない。恐ろしくも分解なんて出来るわけはないし………ここで虎徹は一つ思いだしたことがあった。
このロボットの製作者であるバーナビーの両親は残念なことに亡くなっているが、感情を表現したNEXT能力を持つ研究者さんがいたことを。その人を探せばもしかしたらロボットが不調な原因がわかるかもしれない。そう思った虎徹の虎徹の行動は早かった。直してやろうという善意が働いたのだ。
「バニー。ちょっとパソコン貸して」
「あ、はい。どうぞ」
虎徹は素早くパソコンの前に座ると、隣はバーナビーという構図で、とりあえずネット画面を開いてサーチエンジンへ。そして検索バーに文字を打ち込んだ。
「頼む…hitしてくれよ」
念を入れるかのようにEnterボタンを押す。
「あ…同姓同名の方がいるようですね」
あの時バーナビーに教えて貰った研究者さんの名前をネットで検索したら意外や意外にもすぐにhitした。便利な世の中だ。しかし、それほど珍しい名前というわけではないようで、複数人存在しているようだ。
「えーと、ジャンルしぼってみるか」
つぶやきながらも虎徹はロボットに関係していそうなワードをいくつか名前と一緒に並べて見る。
「………多分、この方じゃないでしょうか」
画面を覗き込みながらもバーナビーはディスプレイ上の一人の名前を指差した。
さすがこのロボットの製作に関わるだけあって有名人のようだ。どうやらこの人、今は地方の有名付属工科大学の教授となっているらしいのだが、その場所はシュテルンビルトから物凄く遠かった。ただ、リアルタイムのツイッターをやっているらしく、まさしく今つぶやいているようだ。今は夜という時間帯なおかげで自宅にいるらしいのだが、なんだか虎徹にはよくわからない小難しい話ばかりつぶやいている。頭良すぎる科学者の頭ってどうなってるんだ…やっぱりわからない。
幸運なことに、パソコンのメールアドレスが併記されていたので、そこから連絡を取ってみることにした。
内容はこうだ。バーナビーという男の子の友達として作ったロボットを覚えていますか?最近そのロボットの調子が悪いのですが、原因はわかりますか?と。これをバーナビーに手伝って貰いながらも、もう少しマシなビジネス文面にした。
「一応写真も撮って送ります?」
「そうだな、そうしよう」
バーナビーの提案で、ロボットの真正面からの写真を携帯のカメラで一枚パシャリと撮る。データをパソコンへと転送すると、そのまま添付して送信したのだった。
………期待していなかったわけではないが、タイミングが良かったらしく返信は随分と早く来た。
意外と気さくな人だったらしく、そんなに堅苦しい文面じゃなかったのが幸いだった。
バーナビーの事は覚えており、とても頭も器量も良い子だったと書かれている。しかもシュテルンビルトでヒーローをしていることも知っていて応援しているそうだ。かなりの好感触な返事だった。
しかし…ロボットの事に関しての文面だけは、虎徹とバーナビーの範疇を越えていた。
「な…これは………」
そこには素人にもわかるように、研究者のNEXT能力とロボットに与えた影響が丁寧に書かれていたのだったが………
そうなのだ。このロボットは…ただのロボットではなかった。
友達が欲しいと思っていた4歳のバーナビーの模倣遊びをさせる為に作られたロボット。
バーナビーの意思とシンクロをし、バーナビーの思考をしゃべるように出来ている………バーナビーの本人そのものだったのだ。
ゼンマイ仕立てではない自我の発信元はバーナビーで、その感情と本心を言う子ども。それは辛く苦しい子ども時代を送ったバーナビーの身代わりとして今まで存在させられて。だから、バーナビーでないと知らないことも全て知っていて。
「………全…部………僕…の本心…?」
あの子供じみた薄暗い発言も全てバーナビーが思っていたことを代弁していただけだったというのだ。
知らなかったのに、知ってしまった…バーナビーは友達だと単純に思っていたのに違ったのだ。それはバーナビーも知らない心の奥底を吐き出していて、動かないロボットを見下ろす。
「バニー………」
名前を呼ぶだけで虎徹は何も言えなかった。
それは友達だと思って子供じみた遊びでも、バーナビーとロボットは確かに仲良く見えたからで、それが擬似的なものだけで壊れ、一瞬で崩れてしまったのだ。思い出もたくさんあっただろうに全部繋がって共有していたのだ。
誰にだって無意識のうちでも心の奥底にしまっている感情があって、それを本人が全て知り得ているわけもないだろう。
心を気丈に持って欲しかったからこそ、虎徹はバーナビーの両肩を正面から軽く叩いた。
下を向いたバーナビーはゆっくりと手を伸ばして、虎徹のネクタイを軽く握って――――――
「虎徹さん。ネクタイは首をしめるために存在していると思いませんか?」
どこまでも暗い顔を上げたバーナビーは確かにそう虎徹に伝えた。
バーナビーの後ろでは、もう二度と動かなくなったロボットが二人をいつまでも見守っていた。
『はじめまして、僕は…虎徹さん専用のヤンバニです。これからよろしくお願います』