バーナビー・ブルックスJr.が鏑木・T・虎徹を殺害したと出頭してきたのは、失踪届が提出されてから一週間後のことであった。

今、一人の男が、シュテルンビルト司法局ヒーロー管理官であるユーリ・ペトロフに呼び出された。
男の役職はヒーロー管理官補佐役であり、上司であるユーリの部屋に行くことは、もちろん今まで何回もあったことだが、この時はさすがに尋常ではない雰囲気を既に感じとっていた。
「バーナビー・ブルックスJr.が自首をした。鏑木・T・虎徹を殺したのは自分だと…」
そうしてずっと悩んでいた案件の結末をユーリは男に伝えた。
「まさか………あのバーナビーが…ですか?信じられない」
男は、事のあらましを最初からもう一度脳内で整理し始めたが、それでも簡単に信じられるようなことではなかった。
事件の始まりは、ワイルドタイガーこと鏑木・T・虎徹の失踪だった。
世間的には正義の壊し屋と名高いが、使命感は人一番強い人間であるからして、彼が救援救護などの呼び出しを故意にすっぽかしたことはただの一度もない。
しかし、その夜に起こった事件に、彼が駆けつけることはなかった。
他のヒーロー達も色々な理由で駆けつけられないということが稀にはあるので、ヒーローテレビを見ている視聴者たちはまるでその事実に気がつかなかった。
それはワイルドタイガーがそれほど上位のヒーローでなかったせいかもしれないが、それでも反面として彼の所属企業であるアポロンメディア社では小さなざわめきが起きた。
事件が発生するとヒーローへの呼び出しと共に、サポートするメカニックチームも準備体制に入るのだが、虎徹がいつも右手につけている筈の通信デバイスからの信号がなかったのだ。
それは、バイタルサインとは違う根本的問題で、つまり装着していないということである。
機器点検や風呂などの一部の事情以外、ヒーローの通信デバイス装着は義務付けられている。
それが外されていると気がついた時、メカニックチームは迅速に動いた。
そして、虎徹の自宅から床に落ちていた通信デバイスを発見する。
しかし…ただそれだけしかなかった。
何の痕跡も残さずに、鏑木虎徹は丸ごといなくなっていたのだ。
正体を隠しているとはいえ、虎徹はスーパーヒーローの一員である。
10年という永い年月の中では、犯罪者たちに恨まれるような確保をしたことも、もちろん数えきれないほどあった。
ただの行方不明や蒸発と簡単に考えることは危険だった。
世間的には、ワイルドタイガーは病気であるという苦しい発表をし、アポロンメディア社は捜査を警察と司法局へ投げたのだった。
闇雲の中でもなんとか捜査を始めた。
虎徹の母親と娘はシュテルンビルトの外に住んでいるが、そちらに戻っている形跡は全くなかった。
むしろ、父親がいなくなったと知った娘は酷く動揺したぐらいだった。
次に、友人関係も探ってみた。
一番の親友と言えるのは、ロックバイソンことアントニオ・ロペスらしく、話を聞くとよく飲みに行ったりするらしい。
しかし、最近は色々と事件も立て続けに起こっていたせいか、二人が会うのはご無沙汰だったらしく、こちらも情報は得られなかった。
他の友人もいないわけではなかったが、極めて希薄だった。
虎徹は根っからのヒーローだったらしく、母親や娘とわざと離れて暮らしているくらいの人間である。
今回のようにもし何かが会った時に、他の人間に迷惑がかからないよう、友人も仲間であるヒーローくらいに絞っていたかもしれないと思うほどの人間関係しか浮かばなかった。
そして、友人…とはまた違う仕事上のパートナーとしているのが、あのバーナビー・ブルックスJr.であった。
「私だって信じたくはないのだがね。本人がそう言っているのだから、仕方あるまい」
ここでユーリは机の上で少し組んでいた両の手を緩めて、軽く額を抑えた。
「警察は…事件にバーナビーが関係しているのではないかと、しばらく監視していたようだがね」
そして嫌そうに続きの言葉を出す。
「えっ…それは凄いですね」
単純に警察を誉めるという感じに、向かいの男は声を出した。
相手はあのトップヒーローのバーナビー・ブルックスJr.であるからして、万が一にも間違ったではすまされない筈である。
それでも見張っていたとしたら、何か捜査に引っ掛かることがあったということだ。
「事件発覚前夜、鏑木虎徹の姿をバーナビーの住んでいるマンションのロビーに設置しているカメラが捉えていたらしい。それ以来、彼の消息は途絶えたのだから、疑わない方が確かにおかしいかもしれないな」
ユーリは淡々と警察から回って来たと思われる捜査資料の一部を片手に読む。
「それは…また………なんというか」
怪しい…怪しすぎる。
しかしバーナビーがそんな短絡的に危ない橋を渡るだなんて…イメージとは随分違う。
実際自首してきたのだから、そんなものなのだろうかとも思ったが。
「今、バーナビーはどこに?」
「NEXT専用の留置所に居る。だが、アポロンメディア社からはバーナビーを解放するようにと要求が来ている」
自首したのはバーナビーの意思のようだが、会社からすれば拘留などということは、溜まったものではないのは当然だった。
会社にとって、バーナビーは広告塔以外の何者でもない。
無茶を言っているのはわかるが、未だにマスコミ各社が報道しないのもアポロンメディア社が牛耳っているからというだけで、シュテルンビルト外のマスコミやフリーランスはそのうち動くだろう。
その前に手を打つといっても、かなり難しいが、留置所にぶち込まれているよりはマシだ。
「それで、私は君を呼んだんだ」
「俺………ですか?」
ここでより深い核心に迫ったの如く言われたので、男は疑問を口にした。
自分は確かにここ数週間、ヒーロー管理官補佐としてユーリの下で鏑木虎徹の失踪事件に絡んで調べていたが、結局何も掴むことは出来なく、驚くべき犯人という事実はともかくとして事件は終わったようにさえ聞こえていたが。
「バーナビーは自首したが、黙秘を続けている。つまり、鏑木虎徹を殺害した証拠が何もないのだよ。警察はバーナビーのマンションの捜索をしようとしているが、今の段階では司法局はそれを認可できない」
自首したのに黙秘する相手を留置所でも扱いかねているらしいが、今それは問題ではなかった。
まず根本自体が不透明で謎である。
本当に鏑木虎徹は死んだのか?ということが、眼前に広がる。
遺体が発見されたわけでもなんでもないのが今一番確実にある現状だったのだ。
それでいてバーナビーにだんまりされるということは、次の段階に進まなければいけない。
一応、案の定というか捜査当局からは家宅捜査の令状発付が来た。
それは今ユーリの目の前の机に転がっている。
「それは………バーナビーがヒーローだからですか?」
「アポロンメディア社を納得させるには、我々が警察と一緒に立ち会わなければいけないということだよ。わかるかね?」
司法はどこまでも中立であることが最善に望まれている。
それが、たとえヒーロー管轄を任されているとはいえ、覆されることは許されない。
だが、今までの関係性からアポロンメディア社には譲歩しなくてはいけないという、暗黙も存在している。
ギリギリの妥協点が、司法局の担当官立会いの元という算段だった。
「………わかりました。行きます」
双方の立場を保つために、気はあまり進まないが男は了承したのだった。

家主であるバーナビーは、もちろんこの場にはいない。
一人暮らしである彼のマンションの前で儀礼的に令状は発動された。
実際問題、立ちあっていると言うだけで、男が直接捜査をするわけではない。
先方を切った鑑識を含めた捜査員の後で立っているだけだ。
無論、男も調べるつもりはあるのだが、専門知識もないのに邪魔をするわけにもいかない。
1時間ほど玄関の前で待ちぼうけを食らい、せわしく外に出たり戻ってきたりする捜査員の邪魔にならないように避けているくらいだった。
そして、ようやく指揮をとっている捜査官の一人に呼ばれた。
多分、男より一回りほど年上だろうと思う、貫禄な相手だ。
「ベッドルームにて、被害者の血液反応が出ました」
そう言われて案内されたベッドルームはひゅうっと口笛を吹くぐらい広かった。
それは一人暮らしには勿体ないほどの大きさであったが、それ以上にあまりこの部屋には物がないから、余計にそう見えるらしい。
広く取られた窓際から少し離れた場所に鎮座するのはダブルベッドで、バーナビーの高身長を考慮した特注製と見える。
あとは観葉植物がいくつかと、低い位置に照明が取り付けられているくらいだ。
「シーツの一部からだけの反応ですが、紛れもなく被害者の血液です」
捜査官は淡々と説明をし、シーツの中央部を指差した。
どうやらそのあたり一帯から反応が出たらしい。
「それだけでバーナビーと犯人と決めつけるのは早とちりでは?二人は仕事上のパートナーでしたから、個人的に家に泊まったりすることあるでしょう。たまたま怪我をして出血…ということもあるかと」
バーナビーの肩を持つわけでもなかったが、男はそう言ってみた。
多少の血液ならば、日常生活で伴うのは当たり前だ。
それは、刃物の扱いを誤ったり、何らかの理由で粘膜を傷つけて鼻血を出したり、とヒーローでなくともいくつかそれは思い描くことは出来た。
「……………血液反応が出た場所が、もう一つあります」
男の疑問に返答はせず、捜査官は次なる場所へと背中で導いた。
続いて連れて行かれたのは、バスルームだった。
こちらも、浴槽を含めて相当広いと言って過言ではないだろう。
タイル張りの壁一面にテレビが付いていることはもちろんのこと、他にも相当たくさんのスイッチが付いているから、ジャグジー機能とかも余裕でありそうだ。
一番解放感を感じるのは外へ繋がる窓で、かなり広く取られているので、浴槽へとつかれば、高層ビルの夜景を一望できるに違いない。
しかし、捜査官はその窓を隠すように黒い布で遮り始めていた。
「何をしているんですか?」
「ルミノール反応を見るには化学発光が必要ですので、外の光を遮っています」
そうこう言う内に、元から準備を始めていたらしく、ルミノールの塗布なども整ったらしい。
窓の外からの光を完全に立ち切ったところで、今度は中の光だ。
バスルーム付近の扉を何重にも締め、捜査官は照明をパチンッと切った。
瞬時に辺り一面が暗くなる………筈だった。
「な、何ですか………これは…………」
予想していた漆黒の闇など、まるで訪れなかった。
どこまでも不気味に青白い発光が、その場にはただ存在し続けていた。
それは、多少の血液反応なんていう生半端なものではない。
タイル張りの床はもちろんのこと、浴槽の全て含めてシャワーも換気扇も排水溝も備え付けの他の器具も天井も、何もかもが光っていたのだ。
もし、これが全て…鏑木虎徹の飛び散った血液だとしたら……………考えられることは一つしかなかった。

後日、バーナビー・ブルックスJr.は、正式に逮捕起訴された。
しかし…
「遺体は見つからない…か」
男は、自分のデスクに座りながらも憂鬱に考えた。
あれから何度もバーナビーのマンションの捜索が行われたが、肝心の鏑木虎徹の死体は何一つとしてみつからなかった。
本人の殺したという証言と、あの血液反応だけで、踏み切ったが…どこまでも納得がいくものではない。
相変わらずバーナビーは黙秘を続けているし、精神鑑定さえ用意されそうだ。
あの出血量からすると、確かに鏑木虎徹が亡くなったことは間違いないだろう。
だが、どうしても死体は見つからない。
警察も早い段階から張り込みしていたらしいし、当然バーナビーの車やゴミも全てチェックしていた。
死体を捨てるそぶりさえなかったのか?わからない…
男はぐるぐると考えながらも借りてきた捜査資料をぼうっと眺めていたが、そのせいで椅子が変な体勢になっていたらしく、がくりっと書類を落としてしまった。
慌てて資料をかき集めるが、他の書類の山に紛れてしまったみたいだ。面倒だ。
仕方なく、一面を整理するかのごとく、並び変える。
「ん?」
その最中、変な角度で男の視界に入った書類があった。
それはアポロンメディア社から押収した、バーナビーの健康診断結果である。
ヒーローという特別な職業な為、彼は1カ月に一度定期検査を受けていたらしい。
丁度、バーナビーが健康診断を受けたのは、鏑木虎徹の失踪した日の三日後であった。
バーナビーの結果は視力が多少悪い以外は、至って健康そのものだったからこそ、まじまじと見ることもなかった。
身長・体重・視力・聴力は元より、血圧・検尿・心電図・胸部X線などの一通りの項目の中に、全身レントゲン結果があった。
違和感を覚えて、そのレントゲンを凝視する――――
「まさか…………」
犯罪者相手に間違いであってほしいと、これほど思ったことはなかった。
だが、これが結末ならば、あの日バーナビーの部屋を見て回った時に頭に引っ掛かったことも、全てが………繋がる。
男は、あの時の捜査官から貰った名刺をケースから引っ張り出して、携帯電話を手にかけた。
忙しい最中、たまたまではあったが居たらしく、直ぐに電話は繋がる。
そして何点かの質問をした後、茫然となった。
こんな…こんなことは、あり得るのだろうか………
あまりの出来事に両の手が震えてしまって、歯がガチガチと勝手に鳴って、仕方がない。
自分は裁判官も兼ねていて…今までどんな残虐な事件も耳にしたし、現場へ足を運んだこともないわけでもなかった。
しかし、これはその常識さえ覆すほどの………
自分の考えを、捜査官に伝えることはとても出来なかった。
辛うじて礼を言い、電話を切った男は、次にバーナビーに直接会うために重い気持ちを引きずりながら書類を書くことになった。

面談には何日か必要としたが、残念ながらあっさり叶ってしまった。
シュテルンビルトは陪審制であるから裁判は比較的早い方なのだが、証拠が確定的ではないバーナビー・ブルックスJr.というヒーロー相手に、司法局もなかなか扱いを手招いた為、彼はまだ留置所にいたのだ。
扉をあけるとそこは意外にも小さな白い部屋で、男は机を挟んで椅子に座ったバーナビーと対面することとなる。
後ろには、立ちあいの担当官が二人ほど立ち、こちらを監視している。
「………今回は、面談に応じてくれて感謝します。俺は、シュテルンビルト司法局ヒーロー管理官の補佐をやっています。よろしく」
こちらも一応反対側に座り、役職に続いて自らの名前を名乗った。
この立場を持っていなかったら、バーナビーと直接会うことは到底かなわなかったであろう。
「こちらこそ、よろしくお願いします。貴方…何度か、ユーリ管理官の側に居たことがありましたよね」
「覚えていて貰えたとは光栄です」
ここまで普通の会話が出来たこと自体、男は薄気味悪かった。
でも確かにこの場にいるバーナビーは今までのヒーロー像と何ら変わりはない。
本当に、鏑木虎徹を殺したとは信じられないくらいの様子であった。
「今日は、なぜ鏑木虎徹を殺したのか、尋ねたくて来ました」
上辺だけで済ませるつもりはない…男は最初から確実にそれを伝えた。
「言いたくありません」
にっこりと笑みさえ浮かべて、バーナビーは完全なる拒否を示す。
男がバーナビーと面会するのは初めてだが、聞いた話によるといつもそうらしい。
必要な会話は優雅にこなすくせに、肝心要の事件に関しては、どこまでも沈黙を続けている。
「わかりました。なら、自然にお話出来るように環境を整えましょう。俺の話を聞いて貰えればの話ですが」
「どうぞ。お好きに」
素気なくだが一応バーナビーが反応したのを皮切りにした。
「俺が最初に疑問を抱いたのは、貴方が自首してきた日です。鏑木虎徹の遺体は見つかっていないので正確な死亡日時はわかりませんが、それでも失踪発覚から1週間後ほど立って貴方は自首をした。騒ぎになっているのはわかっていた筈だ。どうしてです? 」
その問いに、もちろんバーナビーは答えない。口は結ばれたままだ。
「鏑木虎徹が殺されたのは、失踪発覚日の前日か当日のどちらかでしょう。だから、貴方は1週間という日時が必要だった。遺体を消すために」
ここでぴくりっとバーナビーの組んだ指が動いたが、あくまでも言葉を続ける。
「貴方を疑い監視していた捜査官から話を聞きました。事件発覚以来、貴方は仕事以外では滅多に外出をしなくなったらしいですね。最初は、鏑木虎徹を監禁か何かしていると思いましたが…貴方の部屋の様子を見て、次の疑問が浮かびました」
バーナビーは相変わらずこちらに視線を合わせているだけであったが、一旦言葉を置く。
「貴方は…一人暮らしですよね?でも、コップも歯ブラシも食器も揃って二つ置いてあった。警察は、彼女がいるという程度のことしか考えなかったようですが、違う…なら………相手は誰だということになります。しかも、それは、事件発覚後に貴方がわざわざ買いそろえたことを捜査官は俺に教えてくれました」
「………僕は、一人暮らしではないですよ」
ここで初めてバーナビーは肯定をしめしたが、それはどこまでも暗い音と一緒だった。
「そう…貴方は鏑木虎徹と暮らしていた。でも、それは彼が死んだ後だ。なぜか…と思っていたところ、貴方の買い物リストをみてわかりました。貴方は、殆ど食材を買っていない。それなのに、仕事中も殆ど食事をしていないことが確認されています」
ここまで何とか言いきった。しかし、それさえも連続で話していなければ無理な内容で。
「よく…わかりましたね」
薄い笑みを浮かべながら、バーナビーは言う。
笑っている。笑っているのだ。この状況で。
「貴方は…末恐ろしい人だ。むしろ、この事実を誰かに明かして欲しかったのでしょう。だから、わざと…」
そう言って、男はあの時見たバーナビーのレントゲン図を示した。
いくつか書類は持ち込んだが、これが何よりの証拠であった。
「…鏑木虎徹は妻を亡くしているとはいえ既婚者でした。このレントゲンの………貴方の腹部に示されているのは、彼の指輪ですね?」
もしかしたらこの瞬間。恐怖に、レントゲン図を持つ右手が小刻みに震えていたかもしれない。
それでも、男は何とか叩きつけるようにバーナビーに呈示をかけた。
「……………はい」
認めた………
バーナビー・ブルックスJr.は鏑木・T・虎徹を殺し、その遺体を食べつくしたことをここで確かに認めたのだった。



そうして、バーナビーにとっては素晴らしい世界が訪れた。
その供述証書が全面的に世間に明かされることは決してなかったが、読んだ担当官は一部だけでも倒れそうになった内容だ。
鏑木虎徹の遺体の行き先を当てられた後、バーナビーは今までの沈黙がまるで嘘のように、一連を語った。

「だって、おかしいんですよ。虎徹さん…僕のことを好きだって言って来たんです。駄目なんですよ。あんな綺麗な人が、僕みたいなのを好きになっちゃ…」
「でも、つい嬉しくて目茶苦茶にするくらい、ベッドで抱きました。虎徹さんも泣きながら嬉しそうでしたよ。だから仕方ないんです」
「僕が何度も貫いて射精しているうちに、虎徹さんが動かなくなったんです。あ、不味いなとわかっていたんですけど、僕は止まらなかった」
「そしたら段々と虎徹さんの身体が冷たくなってきたんですよ。折角、虎徹さんと一つになれたのに、勿体ないなあと考えて。だから、本当の意味で一つになろうって思ったんです」
「わかります?虎徹さんって、凄く美味しいんですよ。血や肉だけじゃなくて骨も残らず全て………大切に大切にとっておいた眼球は、飴玉みたいにずっと口の中で転がしていても全然飽きなかった」
「だから…全部食べた後は、もう何もしたくなくなったんです。しばらくは二人で一緒に生活できましたけど、それももう必要ないですし」
「とりあえず僕と虎徹さんが一つになったことを誰かに伝えたくて、ここにきました。何か問題でもあるんですか?」
「好きな人と一つになれるって、本当に素晴らしいですよ―――――」











鏑 木 ・ T ・ 虎 徹  殺 人 事 件