最近、バーナビーは何かと忙しいらしい。
虎徹は、乙女ゲーまっしぐらというバーナビーを故意に知らされてからというものの、まあ…色々あって互いの住まいを行き来することが多くなったのだが、そんな事情があるというならば空気くらいは読める。
ということで、生活必需品の買い出しついでに、今日は珍しく一人きりで少し出かけることにした。新聞の折り込みチラシを何気なく眺めていると、都合よく駅前に新しく家電量販店が出来たらしい。世の中便利になったものだ、ありがたい。さすがにオープン日は尋常ではないほど混み合うので避けたが、野次馬根性宜しく見に行くことにした。
「うわっ、見事に売り切れか…」
先着50名様限定の、ヒゲ剃り機である電気シェーバー。チラシで見当をつけて狙ったので朝一に虎徹は家電量販店へ到着したのだが、コーナーの前で一人佇んだ。
どうやらこういった目玉商品は、開店前から並び整理券をGETしなければいけなかったらしいというシステムを知るのは後の祭りである。
専用コーナーには他のメーカーの電気シェーバーも並んでいるのだが、いつも使っているメーカー以外なかなか手を伸ばせない。うっすらとヒゲが伸びてきた二十歳頃、兄に勧められたのが、この外国メーカーの電気シェーバーだった。今使っているのが何代目かは忘れたが、とりあえずその電気シェーバーの調子が最近悪いのだ。さすがに寿命を感じて新しいのを買おうと思ったのに。これで、もし転売目的だった奴がいたら、少し恨みたいくらいだ。
「うーん。折角だから、見て回るか」
手ぶらで帰るのもくやしいので虎徹はエレベーター前に向かい、フロアマップを見上げ眺めた。
やはりブロンズステージには珍しいほど大規模な家電量販店らしい。電化製品はもちろんの事、日用品、食料品、ブランド品、スポーツ用品、CD、ゲームなどの玩具…と一通りの物が揃っており、最上階フロアは全部レストランになっている。これはスゴい。手広くて感心しながらも、虎徹はぷらぷらと見て回った。
「ん?」
大体見たけどそこまで特に買いたい物があるわけではないから、そろそろ帰るか…と思っていた矢先であった。広すぎて若干迷路を感じた中、フロアの端で見つけた物があった。
そこは家電量販店では珍しい物の、ありきたりな本コーナーだったのだが。
「これ…もしかして」
一応警戒して周囲を五回ほど見回した後、誰もいないことを確認してから虎徹は完全に立ち止まった。
そこは平たくいうと、オタク的なアニメゲーム雑誌コーナーだったのだが、世間一般的認識では少女漫画コーナーのような場所に虎徹のようなオジサンがいるのは好ましくないというくらいはわかっているから、周囲の目を気にしながら…その問題の乙女ゲーム雑誌を手にとったのだ。
「やっぱり…これ、早売りじゃないか?」
裏表紙に書き込まれた発売日など全くアテにはならないが、むしろバーナビーに叩き込まれた乙女ゲー雑誌発売日を脳内から蘇らせた。数多いゲーム雑誌の中でも乙女ゲームに突出した雑誌は、非常にマイナーである。中には取り扱っていない書店もあるくらいだ。そんな知名度なので、早売り店を見つけられないというバーナビーの嘆きは痛烈だった。それが、今目の間に発売二日前の状態で鎮座している。バーナビーは今月の表紙キャラにはオジサン的将来性があると言っていのでよく覚えている。ここには、今度アニメ化する乙女ゲームメーカーがプッシュしているキャラクターが並んでいた。
おそらく間違いないだろう。虎徹はもう一度、号数を確認して間違っていないことを確信にかえる。
「バニーの為に買っててやるか。どうせ明日は仕事だしな」
そう思い手にとったのは良かったが、レジ前ではまるでエロ本を買うより恥ずかしい思いをしたことは、言うまでもなかった。
バニー喜ぶだろうなと、こちらも喜々としながら…翌日虎徹は出社する筈だった。
しかし、朝。軽い事件が起きた。
「…あべっ、………うわっ、マジかよ………」
洗顔をし、洗面台の前でいつもの調子でヒゲを揃えていたのだが、、、ご生憎様。馴染みの電気シェーバーのご臨終を迎えてしまった。なんか中の回転が勝手に止まったりしていたから油断してしまったのだが、片方のヒゲを無様にも妙な形で削ぎ落す形となったのだ。鏡を見なくとも左右のヒゲのバランスが悪いことくらいわかる。
「あっちゃー、どうすっかな…」
そんなこんなで悶々と考えた処置したので、出社が随分と遅くなってしまった。とりあえず昨日買った乙女ゲーム雑誌の紙袋だけは忘れずに、焦りながらも虎徹はヒーロー事業部へと向かった。
アポロンメディア社の警備はそれなりに厳重である。社員用ゲートも専用のカードがなければ門前払いだし、その社員用カードも人によって入るフロアが制限されている。ヒーロー事業部があるフロアもどちらかといえば制限されている部類に属している為、エレベーターでその階に降りると廊下で行き合う人は少ない。それは虎徹が始業ギリギリという社会人としてはどうかと思う時間歩いているせいかもしれないが。それでも走ると怒られるので早足で進んだ。
「おっ…」
なんとタイミングがいいんだ。虎徹の三メートルほど手前の角からバーナビーが、こちらへと曲がって出てきた。あちらは多分遅刻ではなく単に資料室から書類を探してきたようで、手元にはバインダーファイルがいくつか積まれているが。
「よっ、おはよ」
虎徹は少し駆けてバーナビーに近づき、普段と変わらぬ挨拶をした。しかし、返ってきた様子は虎徹の予想をあっさりと裏切った。
目下に訪れるのは、分厚いファイルが次々と地面へと落下する無骨な音。衝撃によってストッパーが外れたらしく、綴られていた書類が床一面へと散らばり、たちまちに白い床へとなり下がる。
「…も、もしかして………虎徹…さん、ですか…?」
こちらの姿を目視したバーナビーは酷く他人行儀な声を出し、明らかな戸惑いの色を見せながらも不審も混ぜて、驚愕の表情を隠さず、こちらに聞き直して来た。
「そうに決まってるじゃん。どうしたの、バニーちゃん。もしかして、またマベられたの?」
そんな疑問符をつけられるような覚えはないほど、バーナビーは驚きの返事だったのだ。だからこそ冗談半分に、過去の可能性から抽出して虎徹は疑問をぶつけることになる。ご存じの通り、未だにバーナビーの乙女ゲースキーの度は留まることはないので、またマベられることがないということは言い切れないからだ。
「いえ…あの…そう…では…ない…の………ですが」
明らかに歯切れ悪く言葉を濁しながらも、こちらを残念そうにチラチラと見てくる。そうして結局のところ棒立ちしながら書類を拾おうとはしない様子は、まるでおかしい。
「いや、まあ、その…俺の事覚えてるならそれでいいんだけどさ」
なんだか不穏な空気が流れてきて、虎徹も軽い調子で進んで書類を拾おうとは思えないくらいだ。よくある形で茶化そうとしたのだが、どうやら本人は何か真剣らしい。それがわからないことに対する悪寒だろうか。虎徹もつられて言葉がどもる。
「虎徹さん!」
そうしてしばらく悩んだ挙句には、意を決したかのように、バーナビーはぐっと右手に拳を握り、顔を上げてこちらを叫んだ。
「な、何…?」
バーナビーの迫りくる勢いに感化され、虎徹は反射的に返事をしたのだったが。
「あの、そのヒゲはどうしたんですか!?」
次の瞬間には、バーナビーの口からもたらされた言葉に首を傾げることとなる。
「………ヒゲ?……………ああ、これね」
やっと少し合致がいって、虎徹はうんうんと少し頷いた。バーナビーの腑に落ちない様子はこれが原因だったのかと。
「虎徹さんの、あの…チャーミングなヒゲはどこに行ってしまったんですか!?」
その虎徹の反応に納得いかなかったのか、バーナビーの怒濤の攻めが追加される。しかし、チャーミング?そういう発想はなかったので、一瞬理解は出来なかったが。突拍子もないことを言い出すのがデフォルトなバーナビーに対していちいち驚いている場合でもない。
「今朝、ちょっとミスっちまってな。変に剃り残っちまったから、いっそ景気よく全部剃ったんだよ」
当の虎徹は、今はなくなったアゴヒゲのあった部分を軽く触りながら答えた。ヒゲがないとか相当久しぶりなのでちょっと変な気持ちだなあという気持ちも付け加えながら。確かにバーナビーの前でヒゲがないというのは初めてだったから、このリアクションかと勝手に納得しかけたのだが、そう甘くもなかったようだ。
虎徹は気軽な気持ちで答えたのだが、その瞬間にバーナビーが両膝を付いて地面へと、がくっとうなだれた。そうして、ここでようやく事態の重さを知ったのだ。
「そ、そんな!本当に虎徹さんのヒゲが!!!」
まるで自分のことのように…いや、それ以上のリアクションでバーナビーは悲劇のヒロインのように声を絞り出す。その矛先が虎徹自身というより、何かとてつもない世界へ向けられているようにしか見えないのが一番危なく思える。
「いや…そんな。たかがヒゲくらいで………」
それがバーナビー自身の例えば髪型だったりに影響することならばいざ知らず、どうしてそんなことでこのハンサムが人目もはばからずに廊下の床をガンガンと殴るのか、そんなこと虎徹が理解できる筈もなく、ただなだめるだけだ。
「ヒゲのない虎徹さんじゃ…ただの童顔じゃないですか!おじさんじゃない虎徹さんなんて虎徹さんじゃないです!!!」
顔をこちらに上げ、それだけを思い切り叫ぶと、再びバーナビーの視線は世界を恨むかのように床へと向かい、なにやらぶつぶつとつぶやき始めた。
「は?俺のおじさん的アイデンティティってヒゲなの!?」
負けず劣らずと大声で虎徹も叫んだのだが、バーナビーの耳元にはさっぱり届いていないようだ。小さすぎて聞こえないが何かを自分に暗示させるかのように、ネガティブな言葉を繰り返し続けているのだけはわかった。
(ひげにゃんこそうしつひげにゃんこそうしつひげにゃんこそうしつひげにゃんこそうしつ………)
仕方なく虎徹は書類を拾い上げ、何とかうじうじしているバーナビーを引っ張り上げて共にヒーロー事業部へと向かった。
そうしたせいか、その日は一日、バーナビーは虎徹を見ては「はあ…」というため息をついているばかりだった。
おかげで折角手に入れた前売り乙女ゲーム雑誌も、話題にさえ出せなかった。
今のような奇妙な関係になってから、バーナビーがそっけないなどということは一度でもあっただろうか?いや、ないからこそ今こうして初めて経験をするのだろう。確かにヒーローとして忙しいときもあり、仕事と寝るの往復だけの日々もあったが、それはいつもバーナビーと一緒だったのに。
こんな時に限ってちょうど都合悪く、バーナビーの長期休暇の申請が通った。それでも一応重大事件が起きれば呼び出しされることに違いはないが、通常業務からはつかの間の解放を約束されたお墨付きをもらった形だ。
まあ…おそらく…というか多分の原因となった虎徹のヒゲだったが、日数が経てばもちろん生えてくるものである。しかし中途半端な状態では無精ヒゲ以外の何者でもないし…とか、そんな理由付けを自分自身につけて、結局バーナビーとばつが悪くなってしまってから虎徹は以前のようにヒゲを伸ばそうとはしなくなった。
そうして思うのだ。今改めて考えなくとも、バーナビーの好む乙女ゲーキャラは殆どがヒゲ必須だったような気がすることを。そんなこと言われなければ気付けということが難しいとは思うのだが、バーナビーにとっては非常に重要な要素だったのだろう。
どうやら虎徹はヒゲによって辛うじておじさんポディションをバーナビーの中では保っていたようだったが、それが無くなれば………という現状がこれである。ため息をつきたいのはこちらの方だった。
そうして時間だけは瞬く間に過ぎていくのだ。
今更気にかけるなと言う方が虎徹の性分的に無理であった。だからこそ…虎徹は今、バーナビーのマンション玄関先にいる。もはやメールや電話などの上辺ですむわけがない。双方の認識に相互がなさすぎるのもほどがあるので、きちんと話し合おうと思った。そうして、一応インターフォンを鳴らしたのだが返事はなかった。だが、虎徹には確信があった。今日は…オフだろうが絶対バーナビーは自宅にいるということを。
正直、虎徹は曜日や日付をそんなに真剣に覚えるタイプではないのだが、今日だけは忘れやしない。だって今日は、バーナビーが渇望していたというゲームの発売日なのだから。正確に言うと、何度も呪文のように唱えていたから覚えさせられたのだが、それはまあいいとして。通常の流通経路による乙女ゲーならば、フラゲの心配もあるのだが、今回バーナビーが購入したのは………以前問題となったファンが作った乙女ゲーだ。ぶっちゃけ言うと、バーナビーが虎徹を好きになった?原因であるヒーローたちをモチーフにした非公式乙女ゲームだった。
いや、ホント。最初、バーナビーから話を聞いたときは瞠目した。まさかの続編発売である。そりゃ当事者であるこっちの了承など今更得るわけがないのだが、だからといってもそんな想定をモデルになっている自分たちがするわけがない。続編が発売するということは、どうやら好評だったみたいで、それが嬉しいような悲しいような気持ちが正直滲むが、それは今別問題である。
合鍵は当然のことながら拝借している間柄なので、今更躊躇もせず、虎徹は中へと入って行った………のだが
「い…いない?」
まさかのまさかの想定外に、虎徹は茫然とつぶやきを漏らした。
整然とした筈の空間は意外にも散らかっていた。虎徹の部屋のように酒瓶やら衣類やらゴミならばやさぐれか何かを彷彿とするが、それが乙女ゲー関係の本やらCDやらぬいぐるみやらなのがバーナビー独自といったところだろうが。
それでも部屋中探してもバーナビーは不在だった。ただ…カレンダーに赤丸をつけた乙女ゲー発売日の様子だけが残っていて。いなくなってしまったのだ。
そうして翌日もバーナビーがいない会社がやってきた。まだ形の上では長期休暇真っ最中であるからして、周囲の人間からするとたまのリフレッシュでもしているのだろうという認識しかないだろうが。虎徹が単純にそう思える筈もない。あの乙女ゲーム命なバーナビーが、待望の発売日に家にも戻らずどこにいってしまったのだろうか。
結局仕事中とはいえ、そんな事ばかり考えてしまい、いつも以上のどこか上の空となってしまうのだ。
「あーなんだかな…」
フロアに経理女史がいないことをいいことに、うだうだとした独り言をおおっぴらに口にしてしまう。
なんだろうか、この気持ちは。結局自分はバーナビーのことをわかっているようで何もわかっていなかったのではないだろうか。現に今音信不通だし、仲も変な意味でぎくしゃくしたままである。そうこう考えると思いはどんどんとネガティブ気質へまっしぐらだった。
しばらくするとなんとか気を紛らわせなければと思い始める。きっとヒーロー事業部でやることもないのに、ぼうっとしているから余計に悪いのだと結論付けた。そうして別に当てもないのだが、虎徹は廊下へと出た。いないとわかっていても、まるでバーナビーを探すかのように社内をふらふらと歩き始めたのだった。
そんなこんなではメカニックルームに足を踏み入れたのはまさしく偶然。でもこれからは必然となる。
「あれ…斎藤さん?」
パネルモニターの前で、メカニックの斎藤さんが棒立ちしていた。それはいつも自分の発明に絶対の自信を持っている斎藤さんにしてはとても珍しく思えて、虎徹は後ろから声をかける形となった。
「おおっ、タイガー!大変だよっ バーナビーが!!」
「えっ?何ですか、バニー?」
予期していなかった人名が出てきて、条件反射のように聞き返えした。それは相手が斎藤さんでなければ、問い詰めているかというくらいの勢いで。
「実は前々からバーナビーに相談を受けて、研究していた装置があったんだが………」
ここで、何か若干言いにくそうに斎藤さんは言葉を区切る。
「相談?」
これまた初耳だった。別にバディだから包み隠さず全部を話せというわけではないのだが、そういえば最近ちょくちょくとバーナビーはメカニックルームへ行くことが多かったかもしれない。でもそれはヒーロースーツのことだろうというくらいの認識しか無かったのだが、違ったのか。
「ああ。タイガーは、バーナビーの趣味について知っているんだよな?」
「え、ええ………」
今度は若干明後日の方向を見ながら虎徹は答えた。斎藤さんが何か事態を真剣に言っていることはわかっているのだが、どうもこうも何しろバーナビーの趣味は乙女ゲームである。なかなか正面切って対峙できるほど、まだバーナビー並みの度胸は虎徹にはついていない。
それに前からバーナビーの乙女ゲー好きを斎藤さんに言ったという話は聞いていたが、それを面と向かって言われるのは初めてだったので、どういう顔していいかわからないのだ。元凶のマーべリックさんとは何度かそのことについて話をしているから、もう開き直っているが。
「そう。それでバーナビーから提案があったんだ。乙女ゲームの世界を再現できないかと」
ぐだぐだと斎藤さんの対応を迷っていたら、ここでとんでもない発言が飛び出できた。
ていうか、斎藤さんの口から乙女ゲームという単語が出てくるのが申し訳なくて仕方ないのは気のせいだろうか。しかし話はもっとぶっ飛んでいた為、そちらを気に掛ける余裕もない。
「は?それ…アイツ、本気で」
斎藤さんの言う乙女ゲームの世界を再現というのがどれくらいのことだかは知らないが、その発想にいたる時点でバーナビーは大丈夫かと言いたい。そこまで思いつめるとは、乙女ゲーム好きもこじらせると恐ろしい方向へと突飛するのだと感じた。
「ああ。だから私は、乙女ゲームの疑似空間を作ってあげたのだが………バーナビーがその仮想空間に無断で入ってしまったみたいなんだ!」
「え…ええええ!!!えっ、だって。乙女ゲーの中って、、、そもそもバニーって男じゃないですか!」
何だその二次元に行く為に機械に引きこもるバーナビーの構図は。
なんか様になっているのがおかしいのだが、斎藤さんが嘘をつく必要もないだろうから、事実なのだろう。それ本当に乙女ゲームなのか?と思い始めてきた。
「いや、それが………『ヒロインはビッチだから僕が行きます』って。私は補助をしたにすぎないのだが、勝手に仕様を変えられて」
バーナビーの言葉をそのまま反復したらしい斎藤さんは、それでも何を言っているのかわからなかったらしく、ちょっとカタコト気味で。そりゃ、乙女ゲーに関してそんな詳しく知らないほうが幸せだろうから虎徹は深くは説明しようとは思わなかったが、それどころではない。
「回線も切られているし、こちらから強制的にバーナビーを排出することは出来ないんだ。どうしよう…タイガー」
そうして斎藤さんも困り果てた声を出している。
ともかく…ともかくだ。バーナビーは乙女ゲーの世界へとダイブした。そうして…もう帰ってくる気がないらしい。その事実だけが目の前に落ちている。その恐るべき事柄が、ストーンと虎徹の胸に響いた。
だから…
「わかりました。俺も行きます」
「ん?」
不思議そうに聞き返してくる斎藤さんは、まだその意味をわかっていないらしかったが。
もう考えるとか、そんな時間はないような気がして、虎徹は勝手に言葉が出ていた。
「バーナビーを説得しに行きますから、斎藤さん!俺もその乙女ゲームの世界へ入れて下さい!!」
そうして虎徹は決意を固く心に誓い、明言した。
それは、バーナビーを取り戻すために―――