「はぁ…」
それほど広いわけではない室内に、盛大に響き渡るため息。
「はぁ…」
またこちらに一度目配せをして、つかれるため息。とても疲れているご様子を見せてくれる。そうして、現状をありありと示すようにもう一度追加してくれる。
「で、今回はまた何の事件を起こしたわけ?虎徹君」
嫌々ながらもようやく本題に入るようだ。半分諦め口調で自室の机に肘をつけながら深い吐息混じりに、ロイズさんは虎徹を見据えた。
「ええっ!俺ですか?バニーだって、同じ症状出てるのに」
またも一人名指しされた虎徹は、自らを示しながら否定も兼ねて声を上げる。いつもながらだが、隣にいるバーナビーとの扱いの違い酷い。その事を当然と受け止めるかのように、真横のバーナビーはすんなり黙っている。ちくしょう。
「変な事件を起こすのは、いつも君でしょ?早く、説明して」
自らの頭が痛いのを隠そうともせずに、ロイズさんは急かせる。正直、イチイチまじめにこちらに付き合うのがめんどうくさいのだろう。でも上司として把握はしなくてはいけないから、乱雑に聞いてきたというわけだ。いつも何かしら問題が起きるということは間違ってはいないことに変わりはなく、仕方なく虎徹もさくさく説明することにした。
「えーと、だからですね。俺とバニー宛にファンからプレゼントが届いてて、それを開けただけですよ」
自分はそんなに悪くない。それを示すために無難な言葉を選ぶ。
「でもそれ君の早とちりでしょ?最近はファンからのプレゼントも何が仕込んであるかわからないから、一度検査してからって話になっていたのに、届いたのを勝手に」
多少怒りながらも、はあ…とロイズさんはまた大息を追加する。
「………すみません」
さすがにそこは不味かったと今でも思うので、しょんぼりと謝る。だってバーナビーと違って虎徹はプレゼントを貰えれば素直に凄く嬉しいと思って行動にうつしてしまうのだ。仕方ない。
「もういいや…とりあえず。で、どうなの?それ、何か痛いとか違和感あるとかないの?バーナビー君」
心なしか先ほどより優しい声を出して、ロイズさんは虎徹の横に居たバーナビーへ心配をかける声を出す。やっぱり扱いが違うな…と虎徹は若干口を尖らせる。
「いえ、そこまで違和感はないですけど。一応、先ほど産業医に見てもらいましたが、異常は見受けられないようでしたし」
冷静な視線でバーナビーは、模範的な回答を口にした。
「そう。なら最悪の事態は免れたって事ね。じゃあ、とりあえずこっちでそのプレゼントの持ち主探しておくから、通常の仕事に戻って。取材の仕事もキャンセルしないと……」
最後はぶつくさと文句になっての独り言のように、ロイズさんは関係各所への連絡を取り始めた。二人がこんな事態になってしまい、忙しくなったのだろう。
それでも、二人が部屋から出ようとしたとき、ちらりとこちらを一瞥したような気もする。
そう………
虎耳&しっぽの付いた虎徹と、兎耳&しっぽの付いたバーナビーが退室して行くのを見たのだ。



ふにふにふに。ぴくぴくぴく。ふよふよふよ。ゆらゆらゆら。

「ちょっと、バニーちゃん。触るのやめてくんない?」
本来存在しない場所に感覚があるのも違和感だというのに、興味深そうに人の虎耳やらしっぽやら触られて、これで不快にならない方がおかしい。仲が仲なので鬱陶しいと感じるバーナビーの手を直接振り払ったりはしないが、それでも言葉で警告を入れる。
「だって…こんな機会、滅多にないですよ。虎徹さんに虎耳としっぽだなんて…あざとい。あざとすぎる………」
なんでバーナビーがこんなに喜んでいるのか虎徹にはさっぱりわからなかった。この現象が、なぜかバーナビーの心をくすぐるらしかったが。思わず感激しているのをジト目で返してしまうくらいだ。こんな奇妙な状況になっても、幸せそうで羨ましいとは思うが。
「つか、自分も生えてるんだから、自分の触れよ」
諦め半分で言いながらも、バーナビーの兎耳&しっぽを指さすが、全然聞いてない。
それなのでこちらも、もはやバーナビーは半分無視をして虎徹は、こてんっと、問題となったぬいぐるみを触る。これが例のブツだ。メルヘンチックでファンシーな包装されていた箱を上げると、コレが出てきた。中身は、虎徹とバーナビーを小動物にデフォルメしたぬいぐるみだが、これはそれだけではなかった。それぞれに、虎耳&しっほと兎耳&しっぽが付いているのだ。ともかくこれに何らかのNEXT能力が起因されていたらしく、二人が触った瞬間に、本人にもめでたく獣耳としっぽが生えてきたというわけだ。やはり…犯人の目的がわからない。こんな奇妙な恨みを買った覚えもない。
「このぬいぐるみ自体もとても可愛いですから、解決したら貰える様に交渉しましょう。でも、実物の虎徹さんの方がもっと可愛いですけど」
なにか…目の前で目が腐っているようなことを言っている声が飛ぶ。どうも、バーナビーはなぜか虎徹に対して盲目となっている。これでも付き合っている相手だから慣れた筈なんだが、今回はこの虎徹からすると謎効果としか思えない現象により、普段より三割り増しくらい薄ら寒い言葉が出るようだ。
たしかにぬいぐるみは可愛いと…思う。でもこういうものは、娘のような少女が好きになったり、世間でいわゆるバニーガールのような魅惑的な女性に用いるのは、まだ理解できる。だが、バーナビーはイケメンだからなんでも似合うということにして置いておいたとしても、虎徹のような中年男性に似合うか?と言われたら、答えはNOだと思うのに。
「わかったから、ブラッシングしてないで、少し離れろ」
いつのまにか用意した毛の柔らかいブラシで、バーナビーは虎徹の毛並みを丹念にすいていた。そんなに面積が広いわけではないのに、なんかずっと触っているので、これは時間がかかりそうだという杞憂の声さえ出る。
「根元の部分とか、自分だと手入れしにくいと思うですけど、大丈夫ですか?」
そう言いながら、虎徹のしっぽを握っていたバーナビーの手がすすっと降りて根元付近を、ぎゅっと握る。慣れない感覚に、ぴくんっと虎徹のしっぽが垂直に動く。
「だっー、………そ、それを言うなら…お前もだろ?ほらっ、ブラシ貸せ。俺がブラッシングしてやる」
バーナビーの猛攻から逃げるように、無理やりブラシを剥ぎ取って後ろを向かせる。こちらは兎のしっぽだ。ふかふかのしっぽがちょこんと付いている。よく考えると…これ、どこをブラッシングするんだ?という感じだが、言い出したからには仕方ない。ブラシで適当にちょいちょいと表面をすく。なんか毛ばっかりがもふもふしていて短いから実感わかない。兎は、そのながーいお耳の方に真価があるのかもしれないが。それにしても…ハンサムって怖い。一般的にキュートでラブリーと言われる兎系オプションがついても、相変わらずバーナビーはスタイリッシュだった。世界に謝りたいくらいのイケメンだ。別に顔やスタイルがいいから虎徹はバーナビーと付き合っているわけではないが、やはり…ほうっと見とれる。
「虎徹さん?」
手が止まってしまったせいか、後ろを向いてこちらの様子を伺うバーナビーの声がする。
「あ、ああ。すまない…」
「僕は大変嬉しいんですけど、えーと」
珍しくバーナビーが口ごもる。もしかしたら、初めて見たかもしれないくらいの…
ん?いや、何か…虎徹の後ろを見ている。ので、虎徹も振り返る。
「君たち…今、仕事中ってわかってるよね?早く…やることやりなさい」
虎徹の後ろにいたのは、自らの執務室から出てきたロイズさんで、また溜め息を追加された。





先ほど、ちょっとバーナビーに惚れ直したと思ったけど、それは間違いだったと虎徹は盛大に後悔する。
その理由は、今…白衣を着たバーナビーが目の前にいるからだ。
兎耳&しっぽの付いたバーナビーが白衣である。メガネは最初から。もう完全に意味不明だ。わかった。よーくわかった。いわゆる萌え的要素というのは複合されると萎えるという自体を。
「で、バニーちゃん。どうして君は、そんな格好してるのかな?俺は、普通に健康診断受けに来ただけなんだけど」
本日の虎徹のスケジュールは、健康診断の筈でそれを遂行しようとしていたところに思わぬところで相手が立ちふさがった。
虎徹はヒーローではあるが、同時にアポロンメディアに勤める会社員である。ヒーローとして定期的なメディカルチェックを受けているが、それはそれ。あまりに精密すぎる資料を提出は出来ない。今回は普通に所属している健康組合が実施を義務している健康診断を受けるという、普通の社会人らしいお仕事だった。それを受診しに、社員の健康管理を担っている産業保健医がいる医務室に来たというのに、待っていたのはバーナビー。これはおかしい。突っ込むしかない。
「本当は、僕は取材の予定が入っていたんですけど、キャンセルになってしまったので」
そういえばさっきロイズさんがそんなことを言っていた気がする。確かに、この奇妙な耳としっぽのせいで出来る仕事が限られてしまうのは仕方ない。ヒーローが変なNEXT能力に引っかかりました…だなんて、今後のイメージ的にも他言できるわけがないのだから。
「まあ…お前がいるのはいいとしても、先生は?」
一応納得の言葉を一ついれたが、きょろきょろと辺りを見回しても、肝心要の先生の姿がどこを見渡しても見えない。ここは通常の医務室ではなく、健康診断の為の検査機器を置くために少しは開けた広いフロアなのだが、他には誰もいなかった。
「先ほど僕たちを検診したときの血液検査の結果を、NEXT能力者を探す資料として提出しに行ったので、僕が代わりに虎徹さんの案内を引き受けました」
にっこりと笑みを浮かべながら、バーナビーはいけしゃあしゃあと言った。
あの先生は女性だったから、きっとこの若いハンサムに騙されたのだろう。なんという三枚舌だ。たばかろうが、正式に引き受けたからって白衣を着て、バーナビーはさすが堂々としていらっしゃる。
「えー、お前が?………出来んの?」
ちょっと嫌そうにブーイングの声を出す。確かに健康組合に提出する書類なので、そんなに綿密にやる必要性はないのだが。その相手が、あのバーナビーだということが一番に虎徹は不信としか思えなかったのだ。
「大丈夫ですよ。僕はもう一通りやりましたから。ほらっ、昨日…虎徹さんが始末書の〆切に追われている時に」
そう言われて虎徹は昨日を振り返る。虎徹と比べて日々忙しいバーナビーは一足先に受ける手順となっており、元々二人は一緒に受ける予定ではなかった。そして、空いた時間だからこそ、バーナビーも珍しく暇なのだろう。虎徹に構いたいという気持ちが物凄く見える。
「まー、いっか。んじゃ、さっさと終わらせよう…」
その気楽な考えは無駄で、もちろん簡単になど終わる事はない。そう…最初から楽ではなかった。

初めは、無難に身長体重測定。お決まりの測定器で、相手がバーナビーだろうが別に隠すこともない。ただ、少し痩せたらしく横でバーナビーがうるさい。数百グラム単位をいちいちと…太れない体質なんだから仕方ないじゃないか。身長を図るときには、しっぽが邪魔だったからもしかしたら正確ではないかもしれない。それでも出来れば背も縮まないでくれよと祈ったらそれは叶った、良かった。これ以上バーナビーと差がつくのは男としての沽券がだな。と内心で思っていただけのはずなのに、なぜかバーナビーには理想の身長差をうだうだと語られた。
次に血圧測定。血圧計は家庭用の物をもう少し繊細にしたようなもので、何度か計測した。てか、バーナビーは近寄るな。お前が寄ると血圧が上がるんだ。去年と比べても数値が異常じゃないか。落ち着け、鏑木・虎徹。心を落ち着けろ…と思っていてもテーブルを挟んでバーナビーは無駄にベタベタ触るな。こんなことで血圧の薬を飲むようになったら、悲しい一生薬漬けである。
正直、視力測定が一番平和だった。目は良い方だから、調子こいて、上か右かとか言ってたら、1/2じゃないですかと怒られた。ひそかに老眼にならないことを祈っていたが、それでもバーナビーにも自慢できるくらいであり、やはり視力に問題はない。むしろ気になって、裸眼のバーナビーをこちらに座らせて計測してやった。普通ならメガネなりコンタクトレンズをつけたまま調べるから、楽しい。わいわい出来た。
そうして、聴力測定へ。正直、これが一番理解できない。良い判定しか貰ったことがないからだ。高音も低音も虎徹の脳内に響く。なんかこれはかなりパターン化しているのに、バーナビーはいじわるにスイッチを操作する。年とったから聞こえない高音とかあったら嫌なのだが、なんとかクリア。頭がくらくらする。虎耳相手に聴力測定はシュールだから逃げた。
さて、血圧検査と尿検査は予め提出したし、胸部レントゲンや心電図をする設備はここにはない。ようやく一通りの検査は終わったなと安心したところで。
「何、帰る気になっているんですか?まだ、終わってませんよ」
「へ?まだ何かあったっけ」
本当に検討がつかなくて、頭の中をぐるりと一回なぞる。健康診断は毎年の義務で、アポロンメディア社に来てからそれほど回数を受けているわけではないが、それでも前のトップマグと対して検査内容は変わらないことは知っている。
「虎徹さんには無縁だと思いますが、腹囲検査も一応義務なので」
そこまで言われてようやくぽんっと思い出す。腹囲検査は去年から新しく取り入れられた検査で、ウエストサイズをメジャーで測る。ただ、それだけだ。印象が薄いから完全に忘れていた。
「あー、そういえば、そんなのあったな。メタボ検査だっけ?何、それって俺がオジサンだからやるの?」
メタボ。いわゆる肥満体型と認定される人物は年々増えているらしい。それによって併発する病気に対する医療費を抑制するために政府が導入したのが、このメタボ健診だ。つまり、お前は太っているんだから痩せろというありがたい警告だ。こんなので何か解決するのか?と未だ虎徹は理解できないのだが。メタボと言われるのはいわゆる中年成人だ。虎徹は自分の年齢を鑑みて、振りかえる。年だからやるのだったら悲しいなと。
「いいえ、僕もやりましたよ。成人すれば年齢問わず、測定するみたいです」
「えー!バニーも、か」
バーナビーにメタボ検診。激しく似合わない取り合わせに何だか笑えた。腹筋も加味されているのだろうか。
「さっ、じゃあ。脱いでください」
白いメジャー片手に、バーナビーは意気揚々とした姿を見せる。
「へいへい」
おへその上を軸にして測定するため、虎徹はベルトをガチャガチャとはずし、前を少しくつろげて腹部を晒す為に、邪魔になるシャツを軽く捲り上げる。
その状態でしばらく静止していたのだが、肝心要のバーナビーが、じーとこちらを見ていてなぜか動かない。
「おーい。バニー?寒いんだけど」
別に部屋がそこまで寒いわけではなかったが、お腹を出して寝るなと母親に言われたのを思い出すかのように言う。どうも腹部だけむき出しにするのは、どこかむず痒いものだった。
「ああ、すみません」
ようやく意識が戻ったかのように、声とともに動き出す。
「冷たっ」
「虎徹さん、動かないで下さい」
「…だって」
ピタッとメジャーが虎徹の上を接触するとプラスチック独特のひんやりとした質感が伝わる。それが素肌の上を動いて位置を確かめられるわけで、くすぐったいのだ。素肌の上を伝い、虎徹の周囲をメジャーが囲む慣れない感覚に、ズボンで引っかかっているしっぽがゆらゆらと揺れる。
「終わりました」
別にメタボだと引っかからないようにサバを読ませるために腹部に力を入れていたわけではないが、そのバーナビーの言葉でようやくかと、ふうっと虎徹は安堵の息を吐いた。
しかし、安心したのは本当に束の間で、わけのわからないうちにあれよあれよと、虎徹は隣にあった白いベッドに押し倒されていた。
「え?え………何、何???」
意味がわからなくて、思わず?マークを量産する。のしかかってくるのはもちろんバーナビーだ。元々二人は身体の関係はあるが、それはあくまで外での話。会社内でだなんて許した覚えはなかった。
「虎徹さんは無防備すぎます!こうやって、誰の前でも脱ぐんですか?」
ああ、勝手に何か言っているのに、なぜか必死そうだ。人を勝手に組み敷きながらも、勝手にキスを落とし、深々と身体を重ねてくる。
「だー、これは検査だからだろうが!」
キスの合間を縫って、阻む。完全に迫られていたが無抵抗というわけにもいかず、ぐぎぎと迫りくるバーナビーを邪魔しながら、叫ぶのだ。なんか、変な解釈をしているから余計に厄介だ。
「ダメです!虎徹さんのこんな姿を見て欲情しないわけがありません!!」
「そんなふうに思うのは、お前だけ……って、何、するんだよ!」
反論も伝わらず、元から少し脱いでいた虎徹のズボンを半分程度、勢いよく一気にずり下げられた。
「まだ、内科診察が残ってますよ。そのかわいい虎耳としっぽは魅惑で危険ですからね。よく調べないと」
白衣を乱して、使いもしない聴診器を首からぶら下げながらも、バーナビーは都合の良い主張をする。
「あっ」
仰向けでは、ベッドとの間にしっぽが隠れてしまう事に気が付いたのだろう。軽く虎徹を横に寝転がらせてから丹念に、しっぽの先から撫で始めた。逆毛を立たせるようなのに、どこか身体で覚えているその手つきに、虎徹のへたれた虎耳がぴくぴくと震えるというのに、対してバーナビーの兎耳は嬉しそうにぴんっと立ったままだ。
「それに、そういうプレイしようとしてたので手間がはぶけました」
「結局、そっちかよ」
「だって、先が丸まったしっぽが可愛くて、思わず触りたくなっちゃいます。くるっと丸い虎耳もキュートだ。ほっぺも淡いピンクで、本当にあのぬいぐるみみたいですね」
しっぽを先から本当に繋がっている根元まで撫でると、虎徹の臀部が白日の下に露出する。ねっとりとした手つきで、虎耳としっぽを容赦なく交互に触りまくる。
「ふ…ぁ………バニー、、…そこ、ばっかり」
慣れない器官をもみくだされるようにされて、知らない感覚がぞわぞわとして、どう反応していいのか虎徹自身にもわからない。
「他も触って欲しい?ここで、入れてもいいですか?」
わざとやるやかに弄ぶように動いてのバーナビーの誘導だったが。
「好きにしろ………だから、早くっ!」
「ありがとうございます」
わからない情欲とバーナビーの色香に惑わされて、虎徹は体をくねらせて性急に求めてしまう。
バーナビーは特大のごほうびを貰ったかのように喜んで、虎徹の望むように自らの手と身体を進めた。





ドン ドン ドン !

「ちょっと、虎徹君!バーナビー君!居る?大変だよ!!!さっき君たちがかかったそのNEXTの、本当の能力がわかったんだ!」
そうして甘いだけの空間となり下がった筈だったのに突如部屋の扉を叩く凄まじい音が聞こえ、傍からすれば、うるさいとも言える声が、こちらへ向かってくる。
「………ロイズさん?」
バーナビーは口の中だけで、その名前を呼ぶ。
「っ…………!………こ…らっ、………バニー!…早く抜けっ…」
青ざめているのは虎徹の方で、突っ込まれているこんな状態を上司に見られるわけにはいかないと、慌てて真後ろにひっついているバーナビーをけしかける。
重い。邪魔だ。後ろから、のしかかるな!とにかく、はやくどいて欲しかった。
「そのNEXTは…最初は獣耳やしっぽが生えるだけだが、しばらくすると本当にその動物になってしまうんだよ!!!」
そうして業を煮やしたのか、扉の向こうからロイズさんの悲痛な声が響いた―――
「「え?」」
その瞬間、ちょうどリミットが来たことを告げるかのように、ばふんっと得体のしれない奇妙な紫色の煙が二人を覆う。なにも見えない。なにもわからない。
しばしの間の後、煙の中から姿を現したのは…あのぬいぐるみを彷彿とさせるミニマムサイズの虎と兎で………



あれ…これもしかして獣姦?








数時間後。なんとかして元の姿に戻れた二人だったが、しばらく虎徹はバーナビーをガン無視していたことは言うまでもない。











兎 × 虎