それは、思いがけない内容の企画書だった。
恐ろしいことに三次元に乙女ゲーがやってきてしまったのだ。想定外すぎる。
虎徹は若干震える手で、先ほどは適当にしかめくっていなかった書類に目を通し始めた。
なるほど…確かに発想はなかなか面白いと思った。というか極めて斬新な試みである。
普段は決して手の届かない憧れの芸能人たちを一歩踏み込んだ形で親しみを持ってもらえ、尚且つ芸能人のプライベートも垣間見ることが出来るという素晴らしい豪華プラン。
ライト層向けなので決して押しつけがましくないし、下劣ではないのが虎徹にも、よくわかった。
「まあ…良かったな、バニーちゃん。こういうの得意なんだから」
クライアントがバーナビーの隠れた趣味を知っているというわけではなかろうが、それでもあまりのハマリ役に苦笑しながらも虎徹は明るく声をかけた。
自信をもって断言してもいい。世界で一番このリアル乙女ゲーにふさわしいのはバーナビー・ブルックスJr.であると。
「別に…まあ、仕事ですからやりますけど………」
「へ?」
虎徹の予想を大いに裏切り、バーナビーはすっと冷めた目を見せた。見事にやる気がないようだ。
それは、どんなに虎徹が、どん引きをするような変な仕事でもスマートにそつなくこなすバーナビーの初めての反応だった。
というか、先ほどまであれほどスゴかった情熱はどこにいったのだというのだろうか。あんなに虎徹に対して押し迫っていたというのに。
「何か勘違いしていませんか?僕が求めている乙女ゲーはこういうのじゃないんです。大体、ナルシストじゃありませんから自分自身には興味ありませんし…何より他のキャストも三十代どまりだし」
さてさてまたまた始まりましたよ、バーナビーの愚痴タイムが。乙女ゲーに関しては物凄く弁が立つし、こだわりを表に出す。
「そ、そうだね…」
微妙に頷きながらも虎徹は言葉を返す。つまり自分のゲームなんかには興味がない。好みのタイプいないという主張である。
しかし、そう言われると虎徹も嫌と言うほどに納得してしまうのが慣れという奴だろうか。
バーナビーに負けず劣らずのハンサムぞろいなキャスト様達も、まさかこんな残念な言われようをされているとは思っていないだろう。
「それにどんなに乙女ゲーに近づけたとしても、声優さんみたいな美声は無理でしょうし」
出るわ出るわ不平不満。どうやらバーナビーにとって乙女ゲームは不可侵な神聖領域だったらしく、こんな形でお近づきになりたいとは露とも思っていないらしい。
やはり二次元は二次元の存在として崇めたいのか…でも確か前にバーナビーは、乙女ゲーは世界を救うって力説してきたことあったけど。確かに乙女ゲー好きなバーナビーの生きる糧となっているからヒーローとして世界は平和になっているのかもしれないけど。
「確かに…随分と思い切った企画だと思うけどさ。まあ、これも仕事だから…ハイ」
頑張れよという意味を込めて、虎徹は企画書をバーナビーに手渡した。
はあ〜とうんざりするようなため息をありありと見せながら、バーナビーも仕方なく企画書に真面目に目を通し始めた。形の良い指が紙をめくる。
「ん?」
何枚かページをめくったところで、珍しくバーナビーが小さく声を出した。
ふと虎徹も気になりそちらを見ると、バーナビーは確かめるようにメガネの位置を直しながらも、企画書に釘付けになっている。
「どうしたの、バニーちゃん」
「はい。あの、ここに書いてある制作会社とプロデューサー名なんですけど」
指でたどるようにバーナビーは虎徹に企画書を見せて来たので、こちらものぞき込むように確かめる形となる。
自分達の仕事柄、スポンサーばかりに目が行きがちだったのだが、そこに書かれていたのは。
「…なんかその会社名、めっちゃ聞いたことあるんだけど」
わかっていても断言するのがはばかられて、虎徹はわざとぼやかした。
「ええ、そうです。老舗乙女ゲーメーカーですね」
やはりというか間違いなくそうだった。虎徹が超聞いたことあるのも無理はない。だって乙女ゲーを再生する度に、メーカー名が表示されるし。というか、最近の乙女ゲーはメーカー名を起動する度に違うキャラがしゃべるのが流行っているせいで、めちゃくちゃ耳に残るのだ。CMしないジャンルだからこそ、あざとい。
「意外と本気なんだな…老舗乙女ゲーメーカーとのコラボかよ」
さすが豪華キャストを用意するだけあって企画段階からかなり気合を入れているらしい。
「そう…みたいですね。虎徹さんはご存じないかもしれませんが、このプロデューサーさん凄い人ですよ。乙女ゲー業界に新風を巻き起こした方ですし」
「そうなのか?でも、名前からするに男だよな」
本名なんだかどうかは知らないが、その名前はどう見ても普通の男性名にしか見えなかった。虎徹の認識の中では、乙女ゲーは女性が作っているというイメージなのだ。
「あ、はい。男性ですね。元々は新たな客層を開拓しようとして女性がプレイすることを前提としたイケメン揃いの野球ゲームを作っていた方なんですけど、野球をする野球ゲームは腐るほどあるので差別化するために日常シーンを追加しようということになって、彼氏彼女関係になれるを売りにしたんです。このゲームのマルチエンディングは凄いですよ。おかげで恋愛だけではない乙女ゲーが連発するようになったんです」
「そりゃあ、凄いな。狙って作ったわけじゃないってトコが」
ふむふむと納得の言葉を虎徹は出す。確かに女性だけで制作しているのでは思考が似てくるから、女性好みのゲームにはなるとは思うが、女性視点ばかり新鮮味には欠けるのはわかる。未だにキャラ以外の違いがよくわからない虎徹にとってはありがたい話だ。
「そうなんです。最近、わざと狙っている乙女ゲーばっかりなんですよ。とりあえずスチルの枚数増やしておけばいいと思って、見ても違いにすぐ気がつけない差分を無理矢理売りにしたり。キャラクターも多ければ、数打てば当たるって思っているんだかわかりませんが、脇キャラが適当になってまるで骨折しているようなスチルを見かけたり。それなのにフルコンプしないと僕の愛するキャラクターが登場する全員集合絵が出てこないなんて…酷い!酷すぎる!!」
しゃべりながら忌々しいことを思い出したらしく、バーナビーはイライラを見せる。
はい、なんかお得意のスイッチ入ったよ。相変わらず大変な性格である。
「あー大変なのね。でも、このメーカーは大丈夫だってこと?」
「もちろんです!むしろこのプロデューサーさんにお会い出来るってだけで、やる気が出てきました」
さっきまでの愚痴はどこに行ったのやら、いつの間にかバーナビーは清々しく大らかな顔に戻っている。
「立ち直り早いな…」
いや、むしろいいことなのだが、なんか納得いかないのは虎徹で、呆れた声を出す。
「だって、憧れの方なんですよ。僕、この方の初期の頃の乙女ゲー持っていませんし。うまく言ったら、見せて貰えるかもしれないじゃないですか」
「ええっ…それは無理じゃね?
だって、バニーちゃんさ。実は僕…乙女ゲー大好きなんです!って告白するの?」
ちょっと気持ち悪く乙女ゲーLOVE時のバーナビーの口真似をした虎徹だったが、要はそうだった。別にしてもいいかもしれないけど、それでは今まで必死に隠しと押してきた努力が無駄になってしまう。
「それは…そうですね。確かに無理です。しかし、せっかくお会い出来るのに何も情報が引き出せないなんて…生殺しすぎる!」
この世の儚さを嘆くように、バーナビーは下を向いた。絶望している。ヒーローやっていてピンチな時でさえ、こんな悲痛な表情をしたことがあっただろうかと思うくらいだ。
「あのさ、バニーちゃん。俺が一緒についていって…実は娘が乙女ゲー好きなんで………って話振ってみようか?」
軽く同情したからこそ、ぽつりと提案してみる。娘が乙女ゲー好きなのは本当のことだし。本当は内容がアレだし、バーナビーだけの企画だからあんまり行きたくなかったけど。
「本当ですか!?ありがとうございます。じゃあ、この方に関する乙女ゲーの資料をバッチリ作りますから、予習お願いしますね」
顔を上げたバーナビーの表情は明るすぎて眩しかったが、言っていることはとても残酷だった。



打ち合わせ当日。
老舗乙女ゲームメーカーの会議室に、いつも通りのアイパッチを装着した虎徹がバーナビーに同行しても、何も文句は言われなかった。ロイズさんには、はあ?って言われたけど。
どこかで止められたら、いやあ俺達コンビですからヒーローとして出撃するとき一緒じゃないと困りますから、他の仕事でも一緒なんです…とでも言ってごまかすつもりだったから拍子抜けした。ともかく問題ないならいい。
「はじめまして。バーナビーさん。そちらはワイルドタイガーさんですね。よろしくお願いします。今日は最初の打ち合わせなので、あまりお時間は取らせないつもりです」
一通りの名刺交換と社交辞令。言葉通りの少人数の打ち合わせから始まった。仕切って声を出すのは、敬語はうまいが若干やり手っぽい女性で虎徹としてはアニエスを彷彿させるので、少々苦手なタイプだ。
あちらは全員女性で、バーナビーお目当ての男性プロデューサーの姿がなかった。
「あのープロデューサーさんは、今日はいないんですかね?実は俺の娘が乙女ゲー大好きでして、色々とお話を聞いてみたいなあ〜なんて思っていて」
はっはっはっとわざとらしく笑いながら、虎徹は尋ねる。バーナビーが我慢しきれない様子だったが、言わせるのも役目じゃないなと思い、虎徹がその役を買って出たのだ。なるべく流暢に言ったつもりだが、胸ポケットの中のバーナビー制作のカンペの存在感が凄い。
「申し訳ございません。急用が入って、今日は来られなくなってしまったんです。だからこそ今回の打ち合わせは短めにさせて頂きます」
ぺこりと頭を下げながら女性は謝ってくるから、これ以上は虎徹も言葉は告げない。
大変残念なことにだが、バーナビーが肩をがっくり落とすのを虎徹は見逃さなかった。まあ、こういうこともあるだろう。
しかしこれで本格的にここに虎徹がいる理由がないなと思った。それでもバーナビーの方は仕事だしこちらもだらけるわけにはいかないので、話は熱心に聞く。というか向こうの熱意が激しかった。
「キャストの皆さんのご職業を鑑みて、ヒロインは新聞記者という設定にしまた。キャストの皆さんが財界のパーティーに招待された豪華客船でアクシデントが起こり、そこでお近づきとなり個別ルートへと入っていく。これが序盤のストーリーです…」
プロジェクターを使い、スライド形式で概要を説明していくのだが、とにかくマシンガントークが凄かった。こだわりようはハンパないようだ。
バーナビー相手にしているので乙女ゲーの熱心な語り口には慣れている筈だったが、それでも虎徹は圧倒されるくらいだった。これが制作者側からのパワーって奴か。話は勝手に進んでいく。
虎徹はうなずきながらもよくわからない部分などを質問したりしていく。
実際、虎徹が乙女ゲーをやるのはバーナビーにつきあって仕方なくって時以外ないから、実プレイはそんなに詳しくないのだ。それに今回は、キャストがリアルなのである。端からみればそんな未知のゲームってどうやって作るんだと思うしかない。
いくらか話を進ませて、虎徹の方は別に必要なかったがあちら様と打ち解けてきたかな?という感じだったが、バーナビーは全く微動だにしなかった。うまく相づちはついているが、それだけだ。
つーか、多分知り尽くしているからこそ質問したりする部分がないのかもしれないが、それとも何か駄目だしでもしたいのだろうか。プロデューサーがいないから興味が薄れたというわけではないだろうが、この乙女ゲー雰囲気が充満する空間でバーナビーが口を開くのは危険だろうから、虎徹としてはだんまりとして話を聞いてもらっている方が安全に思えた。
「基本的に演じているというよりは素でやって頂く形になりますが、一応台本がありますので。
バーナビーさんの役柄としては、紳士でスマートな感じとなります。でも、時に強引さを忘れないシーンをいくつか用意してあります」
話は個別ルートへと入り、専用の資料が配られるので虎徹も読み進める。
なるほど…と感心するほど見慣れたありがちなシチュエーションが並ぶ。今までバーナビーのせいでコアな乙女ゲーばかり聞いてきたからこそ軽く感じるのかもしれないが、良くも悪くも王道というやつだ。実際企画自体がキャラゲーみたいなもんだし。
定番だからこそ、安心出来るのだろう。初の試みなのだからベターな方がいいのだろうと納得できた。事故チューもない、健全レベルだし。シュテルンビルト各地でのデートは観光PRと聖地巡礼にももってこいだろう。
そうして打ち合わせは無事に終わった。
これならバーナビーも少し変わった仕事として難なくこなせるだろうな…と端的に虎徹は思っていた。
「あの…タイガーさん。最後にちょっとお時間よろしいですか?」
「へ?俺…ですか??」
今日のお話はこれで…という話の流れの中で、いきなり名指しで指名された。バーナビーがしゃべらない分、というかしゃべれないから代わりに色々と聞いていた分、虎徹が色々とべらべらしゃべってしまっていたのだが、何かまずいことでも言ってしまっただろうかと、不安になった。
「はい。あの…実は最初の企画段階で出た話なのですが、お二人はコンビなのでバーナビーさんだけではなくタイガーさんにもご出演を願おうという事になっていたんです。それで…いえ失礼ですが、この企画にはご年齢的にもあまりそぐわないんじゃないかということでオファーはしなかったんですけど」
「あーそうだったんですか。いえ、別に気にしていませんよ」
わざわざご丁寧に謝られて虎徹はかえって恐縮した。別にヒーローとしての仕事以外でも必ずコンビじゃなきゃいけないとか言い出すのはバーナビーの方なので、虎徹自身は全く気にしていない。
「今日は驚きました。企画にとてもご理解ありますし、聞き上手ですし、何より想像よりお若く凄く魅力的に感じました。アイパッチ装着したままでもよろしいので、宜しかったらミステリアスな役として、是非企画にご出演願えないでしょうか?」
「えぇ!!!」
飛んでもない爆弾が降り注いだまさか自分に火の粉がふりかかってくるとは。脳天気に第三者面をしていたら突然の当事者扱いだ。
ミステリアスって何?このアイパッチが無駄に効果を発揮するとは思いもしなかった。
裏目に出た。完全に裏目に出た!つい、いつものバーナビーと接しているようにしてしまった。乙女ゲーに関して聞き上手なのはバーナビーのせいだ。全部バーナビーのせいなのだ。
なんだ…そのスパイスを追加したいみたいなお願いは。またオマケなのは別にかまわないが、いや…駄目だろう。やりたくない。凄くやりたくないと虎徹は思った。乙女ゲーの実態を知っているからこそ余計にだ。
しかし、ここで天から降り注ぐかのようにロイズさんの念押しが聞こえてくる。大切なクライアント様。大切なスポンサー様。ワイルドタイガーとして破壊活動に従事してしまった虎徹としてはこれらの方々は神様なのである。
「どうでしょうか?タイガーさんも、のり気なように見えたのですが」
だめ押しの言葉がやってくる。
バーナビー相手には嫌だ嫌だと連呼出来たが、これは仕事だ。その内容がいかにひねくりまくっていても、これがヒーローとしての職務なのである。
虎徹の答えは一つしか用意されていなかった。ごくりと生唾を飲み込んで、息を吸い込む。
「―――嫌です。お断りします」
………あれぇ?おかしいな。虎徹はYESと言うつもりだった。
それなのに背後から真逆の言葉が飛んでくる。バーナビーだ。
「タイガーさんには無理ですよ。僕が断言できます」
「そう、ですか。残念です………」
しゅんと冷たいバーナビーの言葉を受けた女性は、一瞬で悲しがる。
正直、助かった。あんな蒼々たるメンバーの中に混じりたくない。引き立て役ってレベルじゃない。どうしたんだ、バーナビー。珍しく協力的なので、虎徹はその顔を見上げる。
「それと…やはり僕も出演は遠慮させて貰います。僕たちはTIGER&BARNABYですから、二人揃っての仕事でまたご縁があったらよろしくお願いします。行きますよ、虎徹さん」
はっきりと切って言い捨てたバーナビーは、さっさと会議室から出ていって言ってしまう。
「待てよ!バニー」
突然すぎて何が起こっているのか虎徹にはわからなかったが、それでも何とか女性に頭だけ盛大に下げて、バーナビーの後を追う。
続く廊下の虎徹よりかなり前方をバーナビーはすたすたと歩いていたが、気配を感じて突然立ち止まる。
「何で引き受けようとしたんです?」
「だって仕事じゃん。ていうか、俺のコトはどーでもいいんだよ。何でお前まで断ってんだよ」
何でこちらが怒られているかのような感じなのか虎徹にはわからなかった。あんなに楽しみにしていたじゃないか。次の打ち合わせでは念願のプロデューサーさんにも会えるのに、ばっさりと拒否するだなんて。
「貴方が僕以外に攻略されるのが嫌です。そうしたら、気がついてしまったんです。貴方は平気なんですか?僕が他人に愛をささやいていても。だから無理だと思って断りました」
ふいをつかれる言葉に、虎徹は真っ直ぐ前を見て言葉を返せなかった。
「っ…………てっきりお前は、俺に出演して貰いたいのかと思っていた」
「それは違いないですね。でも、僕の方が虎徹さんに合う最高の乙女ゲーを作れる自信がありますから」
つまりだ。作るならバーナビーが自分で作るということだ。確かに筋は通っているというか、最初の主張から変わりはないが、諦めていない。未だに作る気満々だ。
「はあ?あっちはプロだぞ」
「誰よりも虎徹さんの魅力を引き出せるのは僕です。だから………覚悟していて下さいね」
太陽が差し込んだというわけでもないのに、バーナビーのメガネがまるで乙女ゲーのようにキラリと光ったのを見たのは幻ではなかったと思う。
ああ………素直に観念なんてするつもりは全くないが。
いつか………もしかしたら………バーナビープロデュースのバーナビー専用の乙女ゲームに、出演してしまうのかもしれないと、虎徹は少し照れながらも悟った。





そのまま会社に戻って、今回の仕事を断ったことをロイズさんに報告したらめちゃくちゃ怒られたが、仕方ない。対するバーナビーは嫌だの一点張りで反省の色など見せないし。事情も説明しないというか、出来ないのだが。
そして、運命の後日。
虎徹は日付時間指定で、一人で社長室に呼び出された。
何度かバーナビーの乙女ゲーに関する定期報告で訪れているから、今は慣れたが今回はさすがに事情が違うだろうなと思って遠慮しがちになる。
コンコンコン
「失礼します」
本当に恐る恐るの入室だ。ああ…社長からもロイズさんみたいに怒られるのかと困ったなと。
でも自分ではバーナビーを変えられないのだから仕方なく、甘んじて受ける所存でマーベリックさんの執務机の前に立った。
「虎徹くん、ご苦労だったね」
立ち上がったマーベリックさんの、にこやかな対応が嫌に不気味だった。
「いえ。今回の件は、本当にすみませんでした」
かなりの角度をつけて虎徹は盛大に謝った。もはや謝ることしか出来ないのだから。
「頭を上げてくれたまえ。いいんだよ、大丈夫。とりあえずは全部解決したから。だけど君には一応報告しとこうと思ってね」
「え?」
一体何のことを言われているのかわからなくて、虎徹は片目半分だけ目を開けてマーベリックさんの様子を伺う。

「バーナビーの乙女ゲームに関する記憶は消したから、君はもう何も心配しなくていい…」



あんなに念押ししていたのに忘れていた。この人が、ラスボス様であることを―――










二 次 元 嫁 に し か 興 味 な い バ ニ ー ち ゃ ん を 三 次 元 に 振 り 向 か せ る 方 法 1 0
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