前回の話要約
二次元嫁大好きなバーナビーが好きなキャラクターが虎徹をモデルにした乙女ゲーキャラでそのまま虎徹自身に付き合いたいと大告白している最中。
何かややこしいな…





なぜ虎徹がそんなアンダーグランドの世界を知っているかと言われても、何も好きで知ってしまったというわけでは決してないのだ。
ヒーローといえば世間一般では芸能人のような華々しい有名人的扱いを受けることも多くて、10年以上この業界に居れば光より闇の部分が見えて来てしまい、知ってしまった。ただ、それだけだ。
さすがに会社の許可を得ずのグッツ販売などは厳しく取り締まっているようだが、いわゆるファンが非営利目的でやっている部分は黙認しているようだった。
バーナビーはまだヒーローとしては若い方であるしウロボロスの事もあり色々と忙しかったから、そういった部分を目にしたことはなかったのだろう。
その結果が、目の前に転がっていて………つまり、見事に乙女ゲーのモデルになってしまったということだ。
さすがの虎徹もまさか自分たちヒーローが乙女ゲーにされるとは想定してなくて、バーナビーに一応言葉は突っ込みながらも驚きは隠せなかった。
「なるほど…自主制作ですか。確かに知らないメーカーだなと思いましたが、面白そうな内容だったので。
わかりました。買収しましょう!」
最初はよくわからなくてきょとんとしていたが、突然熱くしゃべりだす。どうやらバーナビーからすると、これだけのクオリティを個人が作成だなんて凄い!と捉えたらしい。
しかし、今大切なところは確実にソコじゃないだろう…乙女ゲーに脳が蝕まれていて冷静な判断が下せなくなっているのだろうかという無自覚っぷりも………そろそろ憐れみも含めて虎徹は本気で心配し始めた。
「あー無理無理。これ、あくまで趣味だからね。本腰入れちゃ駄目だから」
ここで完全に否定しとかないと、乙女ゲーに盲目なバーナビーは何をしでかすかわからないから確実に釘を刺して置くようにと、虎徹はパタパタと軽く右手を左右に振った。
「そうですか。残念です………そういえばボイスついていないのは何でだろうと思っていたのですが、そういう事情ですか」
それが唯一の汚点だったと言わんばかりの表情をバーナビーはした。やっぱり声優も重要らしい。愛をささやいてくれないことを危惧しているかのようで、深く考えるのは恐ろしい。
「そ、そうだな。俺達の声編集されるのも何かアレだし。似た声を集められても複雑だしな…」
まあ、乙女ゲーにされている時点で何もかもがおかしいのだが、思わず変なフォローになってしまう。
「しかし、僕達ヒーローがモデルとは全く気がつきませんでした」
それはバーナビーが見境なく乙女ゲーをプレイしているからこそ、行きついてしまった結末だったのかもしれない。
確かにパッケージとかに露骨にヒーロー物だとは書いていないのだが、普通の神経なら気が付くレベルだ。他人の事はよく見えても自分たちの事には意識が回らないというのだろうか。
「そりゃあ、あちら様は俺達にバレないように必死だから。伏字したり名前変えたりはするだろ」
大変残念ながら好奇心旺盛な人間が直接会社にソフトを送りつけるより先に、バーナビー本人が買ってしまったという皮肉がここにあるわけだが。
まだ会社に送りつけられるならそこでガードかかるから悪意があるというわけではなくても、バーナビーが知ることはなかったのだろうけど。つーか、今までが多分そうだ。
「ということは、もしかしてこの金髪碧眼のキャラクターのモデルが僕ってことですか?」
そう言いながらも、バーナビーは説明書をめくって一番目に書かれているキャラクターを指差した。
このキャラクターはいわゆる攻略対象の中でもメインキャラで、ビジュアルパッケージでもセンターを陣取っている。さすが現KOH様は、この乙女ゲー世界でも一番の人気キャラ扱いらしい。
「そうじゃね?つか、バニーちゃんにそっくりじゃん!気がつこうよ!!」
ちなみにそのキャラクターの名前は『バーニー』である。言わずと知れた聖人名バーナバスから繋がるバーナビーの愛称だ。虎徹モデルキャラの名前は『大牙』で、これもかなりわかりやすいような………
「そんなこと言われても、乙女ゲーに金髪碧眼キャラなんて必ず一人はいるじゃないですか。大体、このキャラ…テンプレ通りのツンデレでデレデレでヤンデレな性格設定なんですけど」
自分がモデルだと知って改めて見ると感慨深いところがあるらしく、何やらバーナビーは自分のスペックと比較し始めたが、正直あまり気に言ってないらしい。ファンが作ったのだから好き勝手しているに決まっているが。
まあ…バーナビーが自分をモデルにしたキャラが好きとかナルシストみたいで嫌なのでそうじゃない方が良いけど確かに。というかそもそもバーナビーの好みのタイプは自分自身じゃないのだから仕方ないのかもしれないが。
「それで、間違ってないじゃないか」
幾分か製作者の妄想が入っているとはいえ、元々見た目が完璧なハンサムのバーナビーは性格を改変するしかないのかもしれない。それさえもぶっちゃけ当たっているのだから、凄いのだが。
「納得は若干いきませんが…まあ、いいでしょう。しかし、僕と虎徹さん以外のヒーローはあまり見た目が似ていないような気がするんですけど」
思いなおして、素朴な疑問がバーナビーの口から出て来る。
「仕方ないだろう。完全に顔バレしているのは、バニーちゃんだけなんだから。まあ、俺もアイパッチぐらいだから何となく雰囲気は似てるんだろうけど。他のヒーローは顔隠しているんだし」
説明書を読んで何となくその事は虎徹にもわかった。年齢や体格は大体合っているのかもしれないが、髪の色を始め目の色も微妙に違うキャラクターが多く感じた。
再びパラパラとバーナビーが説明書を見直すのが、虎徹の目にも入って来る。
「折紙先輩…別人じゃありません?」
バーナビーは、目ざとく気がついたことを直球で言って来た。
「そ、そうだな…仕方ないんじゃね?ヒーローの時は、あのキャラなんだし」
説明書によると折紙サイクロンモデルと思しきキャラ…ぶっちゃけ消去法で見つけることしか出来ないくらい性格が違うのだが。目立ちたがり屋だし…自己中だし………普段の折紙とは確かにかけ離れていた。リアルモデルにすると少し卑屈な二重人格一歩手前と言ったところだろうか。別に虎徹がキャラ付けしたいわけではなかったが、もしかしたら立ち並ぶヒーロー達の中では一番の衝撃かもしれない。
メインであるバーナビーモデルキャラの二番手は、少し天然が入ってる正義感強い好青年であった。…多分というか絶対スカイハイだろう。続いてガチホモゲイのオネエ系キャラ…どう考えてもファイヤーエンブレム。最後のガチムチマッチョで少し情けないキャラ…ロックバイソンだ。他は有り得ない。メイン攻略キャラ5人+隠しキャラ1人。個人製作としては、かなり選り取り見取りな性格が揃っているような気がする。ちなみに、ブルーローズとドラゴンキッドはヒロインの友人役及びアドバイス役で登場している。かなり抜かりのない乙女ゲーだ。なかなか得体の知れないこだわりを感じる………
「キャラの見た目と性格は同じでもさ。さり気無く、このゲームの俺って…扱い酷くね?隠しキャラつーか、バニーちゃんのオマケ扱いじゃん………」
確かに若干折紙にも同情するが、あくまで大切なのは自分なので、虎徹は一つ悪態付く。
虎徹モデルキャラクターはパッケージ絵にいないわ。説明書のコマも少ないわ。説明も一文だわ。多分というかどうみてもゲームしてもバーナビーの付属物扱いを受けているに違いない。それでも一応攻略できると言う意味不明さ。誰得?というよりは一応ヒーローの一人だから入れといた程度なのだろうか。確かに虎徹は、他のヒーロー達に比べると魅力的な要素がないのかもしれない。ただのオジサンだし…いくらゲームとはいえ、少し悲しく感じてきた。
「僕の好きな人を悪く言うのはやめて下さい!脇でひっそりと地味に活躍している姿がいいんじゃないんですか!!それに、全く媚びていませんし」
天は二物を与えないと言うけど、それはないだろ………というくらいありとあらゆる意味で酷い叫びをバーナビーはした。どぎつい…
さすが生来はただのイケメンで、普通の乙女ゲーマーとは着眼点が違いすぎて、虎徹は気が遠くなった。
「…実物相手にそこまで言うか、普通………」
僕が好きな人=虎徹モデルの乙女ゲーキャラなのだろうが、というか別に理解したいわけじゃないけど適当応えるとまたどんなとんでもない発言が飛び出してくるか本当にわからなくあった。とにかくどこまでも乙女ゲーまっしぐらなのだけしかわからない。
「でもこれで、良かったじゃないですか」
なぜかほっと胸をなでおろすかのように、バーナビーは言って来た。
「は?何が…」
今の会話で何か虎徹の意に沿うようなことはあっただろうか。1ミリも覚えがないのだが。会話が相変わらず噛み合ってない。
「何だかはぐらかされていますけど、僕は虎徹さんの事が好きで付き合って下さいって言ったんですよ。これでようやく、YESって言えるようになったじゃないですか」
ここで嫌な原点に戻ってキッパリと言って来ながらも、勝手に一人で納得してバーナビーはYESを強調する。
「いや………余計に無理って返事しか出来ねぇだろ!」
確かにバーナビーの無茶苦茶な告白理由を知る為にわざわざこうやって乙女ゲーをやっているわけだが、それが肯定になる理由は全くなかったと思うのだが、何が良かったんだ。一体…と謎過ぎた。
「何故ですか?僕の好きなキャラクターのモデルが貴方だとはっきりしたんですから、良かったじゃないですか。他人の空似とかじゃないとはっきりわかったのですし。それとも、キッカケが駄目だとでもいうんですか?じゃあどうすれば虎徹さんの希望に沿えるんですか?理解が出来ません。この僕のどこに不満があるんですか???」
?と?と?をどこまでも繰り返してどんどんとバーナビーはヒートアップしてくる。まるでバーナビー自身がお買い得物件だと言わんばりのごり押しになり始めた。駄目だ、全く手に負えない。
虎徹からすると、正直…乙女ゲーやってるトコが駄目なのだが、だからと言って頭ごなしに駄目と言っても伝わらないだろうし。いや、よく考えたら何で駄目なんだ。別にいいじゃん…とか思い始めて来て混乱した。とにかく虎徹はこの場から逃げたくて仕方なかったから、逃げる言葉を選び続ける。
「………つーかさ。バニーちゃん、今まで俺の事どうとも思ってなかったじゃん。だからおじさんには、ついていけないわけよ。わかる?」
一つ一つバーナビーの問いかけに答えていたらキリがないほどだったが、少なくともバーナビーが拒絶されて簡単に諦めるタイプではないということだけは十分にわかった。だからこそ虎徹は自分の戸惑いを素直に口に出したのだ。
ツンデレデレデレヤンデレを経たとはいえ、今まで小馬鹿にされるくらいだったというのに、様変わりしすぎて最後には告白って、無理に決まっている。
「一理ありますね。確かに今まで…僕の中では虎徹さんはただのおじさんでもっと格好悪いという思い込みがありました」
さすがに珍しく反省したかのような表情を虎徹は見せた。若干言っていることは酷いような気もするが、この際仕方ないだろう。
「だろ?だから、付き合うとかそういう問題じゃないの。わかってくれた?」
なっ!っと明るく言って、もうそろそろこの話は終わりにしたかった。そして帰りたかったのだが、虎徹の願いがそう簡単に叶うほど世界は優しくは出来ていなかった。

「………わかりました。では、デートをしましょう!」
とても良い思いつきを発言したと言わんばかりに、名案をバーナビーは押した。
「待て待て待て………何でそうなる!今、付き合うのはナシって話の流れになったんじゃね?」
ここまで虎徹の想像を超える突飛を連発されると、突っ込むのも疲れるが、さすがにスルー出来るような内容ではなかった。爆弾投下が多すぎる。
「そう思ったのは虎徹さんだけですよ。大体、僕が虎徹さんの事をよく知らないのに付き合うのが不満なんでしょう?だったら、デートするしかないじゃないですか。現にお互いの家は行き来していますけど、それだけでは不満なようですし」
今以上の関係を望むにはそれしかないと、バーナビーはどこまでも主張する。
「いや…俺の事は大体わかってるだろ?パートナーとしての付き合いだけはそれなりに長いんだし」
確かに乙女ゲーがキッカケで二人は家に行ったりするようにはなったが、それは単にバーナビーが顔出ししている目立つヒーローだからあまり外で飲んだりする機会が少ないだけだ。
それに、たとえ家に来たとしてもバーナビーから花開く話題なんぞ乙女ゲーしかなかったりするから、虎徹の話が少なくなったというだけである。
なんでそれで虎徹が悪いんだみたいな話になるのか、思考がついていかない。
「いいえ!虎徹さんは、本当はもっと素敵な人の筈なんです!僕が見逃していただけなんです!!」
危機迫る勢いをこんな場所で披露されるとは思わなかった。勿体ない無駄遣いすんな!と叫びたい。
おかしいな…マーベリックさんってバーナビーの記憶操作してたんだよな?重ねて性格も、もうちっと何とかなんなかったのか?と問い詰めたいほどだ。
「そんな無理に盲目にならなくて結構だ。俺は俺だよ…」
何だか既に変なフィルター越しで自分を見られているのではないかと思うくらいだった。押しが強すぎる。
「わかってます!だから確認の為に、少し付き合ってくれてもいいじゃないですか!?」
あくまで引くつもりなど毛頭ない形相のバーナビーが迫りまくる。
「そんな…お試し期間推奨みたいに言われても困るんだけど」
はっきりと拒絶しない虎徹も、自分で悪い性格だとは思っているが、それでもここまで思いこみが激しいタイプなバーナビー相手に困る中、正論を吐いても事態が好転するとは思えない。むしろ、みさかいない子だからどんな手段になるかわからなく、それが今やってきた。

「わかりました………じゃあ、貴方がデートしてくれないのなら、このディスクを入れますよ?」
完全に目が据わったバーナビーは脅しにかかったのだ。
「何だよ…それ」
バーナビーがいつの間にか手にしていたのは、やたら白いディスクだった。この距離からでもレーベル面には何も書かれていないようにさえ思える。
それにしても、これってトランスポーター内で乙女ゲーをやるぞ!と騒いだ時と同じパターンじゃね?
今度は一体何をしようとしているのだろうか。ていうか、あれ以上に恐ろしい出来事が待ち受けていると思うと、それだけで虎徹は身震いする。
「これは、追加の18禁パッチです。このゲームで今から貴方とセックスしますから」
平然と言いながらも、バーナビーはディスクをケースから取り出し始めた。
正確に言うと虎徹をモデルにしたキャラクターが対象ということなのだろうが、言い方が悪い!それに、だからと言ってそう簡単に割り切れるわけもなく…
「おい!待て!!それは………」
とうとう禁断の手に染まったバーナビーの右手首を、がしっと虎徹は掴んだ。
本当に無理!本当に無理!!だった。
ただの乙女ゲーでも目を反らしまくっていると言うのに、その上…18禁だと?
いくら今のバーナビーの中の自分が、現実の幻想の狭間の存在になっているらしくても、それを割り切れるほど虎徹は強くなかった。
つーか、何でそんな恐ろしいパッチがあるんだ!本当のアンダーグウランドの怖さを身に染みて虎徹は感じとった。
「じゃあ、デートしてくれますね?」
わざとディスクに伸ばした手をゆっくりしとさせたくせに、いけしゃあしゃあとバーナビーは言った。この場から虎徹が逃げることはもちろん許すつもりはないだろう。
「………場所による…」
素直に行くというのがかなり癪だったので、妥協してやるという様子を見せながら、ふいっと虎徹は目を背けて呟いた。
デートなんてもう何年もしていないからこそ、バーナビーの思考パターンからは想像が出来ない。提案するバーナビーはどこにいても大丈夫だろうが、こちらはただのおじさんなのである。もし乙女ゲーに比例してうら若き乙女達が集まるようなカフェに行きたいとか言われたら、それは全力で逃げるしかないのだから。せめて事前に場所を掴んでホップステップジャンプならぬアップをしておかなければいけないと思った。
「行く場所は、もう決まっています。プラネタリウムです。定番スポットですから、問題ないでしょう?」
それはまるで予定調和か何かのように、こちらに文句は言わせるつもりはないらしい口調だった。
「………それが定番なのは、乙女ゲーの中だけじゃね?……………でも、まあ…わかったよ」
諦め顔だが仕方なく虎徹は言う。
普通の男女のデートでプラネタリウムというのは、アリかもしれないが………自分とバーナビーの二人が立ち並んでいくと考えると、かなり寒い気がする。
しかしだからといって他の場所と言っても虎徹が思いつく筈もない。
そこに行くまではともかくとしても、映画鑑賞と並んでの良い点として、鑑賞中は暗いから周囲に騒がれる心配もない。何より黙って見ていればいいのだから、バーナビーと付き合うっぽい会話をしなくてもいいというのはかなりの高ポイントに思えたからの発言だ。
「じゃあ、次の休みに行きましょう。これ、貸しますから予習してきてくださいね」
「は?」
ぽんっと渡されたのは、先ほどから散々話題に登場して来た自分たちヒーローをモデルにした乙女ゲームで、手渡されたから条件反射のように受け取ってしまったのが恐ろしくあったが、何をどう見てもそれは虎徹の手の上に乗っかる形となった。
「だから、そのゲームに出て来るんですよ。プラネタリウムデート」
予習ってそういう意味で使うものだったっけ?若者言葉とのギャップなのだろうか…いや、これは確実に違うだろう。
当の本人ときたら、どうやら2次元から3次元をなぞるつもりらしく、その選択肢しか今のバーナビーには存在していないらしい。
もしかして、ここを2.5次元あたりと勘違いする算数も出来ない子になってしまったのだろうか………





そうして泣く泣く虎徹はその乙女ゲーを持ち帰ることなってしまい、
まず、メインであるバニーちゃん似キャラを攻略しなければならなくなってしまったのだった。










二 次 元 嫁 に し か 興 味 な い バ ニ ー ち ゃ ん を 三 次 元 に 振 り 向 か せ る 方 法 4
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